しゃかい
「いつか、ここから出られたりしたらいいね。一緒に皆で外へ出られたら、いいね」
切ない表情で、墾田ちゃんは希望を語った。
そんな希望は叶わないこと、知っていた。
知っているからこそ、夢を見たかった。
「そんなこと、僕は望まないよ。基本的に外は嫌いだし、君といられるなら満足だし」
普段通りの微笑みで、パイはそんなことを言っていた。
リア充を忌み嫌うあの表情で、パイはそんなことを言っていた。
「気持ち悪いわね。何を言っているの? あたしは嬉しくないし。そんなこと言われても、全然嬉しくないしっ」
さりげなく言われたので、驚いて顔を赤らめてそう言った。
典型的なツンデレ、といった反応を見せていた。
だからパイはなぜだか、もっと怒る顔を見たくなっていたんだ。
「嘘、嘘は嫌い」
それでもパイの考えをを知らず、色彩は素直にそう言った。
彼女なりにパイを想っているつもりではあったんだが。
「嘘とか、嘘じゃ。嘘じゃないんだからっ」
必死にそうは言うものの、その言葉を真実ではなく可愛さとして皆取っていた。
それなのに色彩はやっぱり素直だったのだ。
「あたしはただ、色々なところにもう一度行きたいと願っただけ。ただそれだけなんだから」
恥ずかしそうに顔を隠して、墾田ちゃんは行きたい場所の具体例を挙げだした。
誤魔化す為に、恥じらいを隠す為に。
行った場所や行きたい場所を、必死に説明していた。
そして素直な人は、その言葉を全て信じていたんだ。
「ああ、そうゆうことだったんか。勘違いしちまったかも、オレが悪かったかな。ごめんなさいね」
墾田永年私財法の得意は勝利へ繋がった。