びじゅつ
「美術、一番皆大好き」
俯いて絵を描きながら、語り出した。
自分の主張だと言うのに、誰のことも見ようとしない。
このテンションにも、皆置いていかれていた。
「絵、好きでしょ?」
頷く少女は多かったが、少年たちはいまいちと言った感じだ。
「ほら、楽しいよ」
色彩もかあさんと同じように、少し卑怯は手段を使おうとしていた。
物で釣ろうと考えているのだ。
少女にはクレヨンと紙を。
少年には粘土などをチラつかせた。
かあさんはスケッチを始めてしまう。
パイも何かを描き始めていた。
墾田ちゃんや倒置も、いつの間にかクレヨンと紙を受け取っていた。
短距離走は、夢中で粘土を捏ねていた。
かんなも粘土で何かを作り始めていた。
しかし、二人だけ喰い付いてくれなかった。
ミスターエックスとシャープである。
「音楽、同じでしょ? 芸術を、感じるんだ」
その二人の元へは、色彩が直々に説得しに行く。
「まあそう言われてみれば、似ているよぉおねえぇぇえ♬」
頷いて、クルクルと回り出してしまう。
それを色彩は満足そうに見ていた。
「英語、大切だよね。外国の美術館とか、行くから。仲間」
取り敢えず、ミスターに対しては自信を付けるところから始めた。
「美術作品の魅力、勿論わかるでしょ? ヨーロッパ、素敵」
頭はいいので、どうすればいいかわかっていた。
説得する為に計画を建てて色彩は言っている。
しかし、彼女には残念な点があった。
説明が下手なことであった。
それと、人の目を見て話すことが出来ないことだ。
「確かに素敵な都市だった。芸術的だと思いましたよ」
顔を上げて、ミスターも頷いた。
色彩は計画通りとはいかなかったが、何となく皆を虜にしていた。
「楽しいでしょ? 魅力、伝わった? 美術、大切」
それが色彩による、最初の主張であった。