びじゅつ
「嫌われ者、わたし」
無表情ながらも、色彩は呟いた。
とても悲しそうで苦しそうな、無表情で。
それを聞いて、ミスターは悲しくなった。
彼女の呟きに、自分の責任を感じざるを得なかった。
悲しくなるしか出来なかった。
「トップが何を言う。必死にもがき皆が求める場所に、君はいるんだ。嫌われていたら、票なんか獲得出来ないじゃん」
珍しくミスターが熱くなって、必死に語っていた。
今まで何度も励まされた。
今度は僕の番に決まっている。
強い決意を持っていた。
なんとしてでも色彩を励ますんだ。
強い意志を持って、ミスターは熱弁を振るう。
「そぐわない。わたしはその座に座るべきではない。それなのに、どうして選ばれたのだろう」
色彩のその言葉を聞いて、ミスターはやっと気付いた。
大変なのは自分だけではない。
ずっと支えてくれた色彩だって、勿論苦しんでいるということに。
「君のこと、僕が大好きだからですっ! そして、僕のことを君が大好きでいてくれるからです。だから皆も、僕らを好きになってくれるのです」
照れ臭かったけれど、ミスターは必死に語った。
大好きな色彩の為に。
尊敬する恩人の為に。
その想いは、真っ直ぐ色彩の胸に届いた。
そしてハートを打ち抜いてしまう。
「卑怯。ほんと、きみは可愛い人だ。きみには敵わないね」
普段の無表情を取り戻し、色彩はミスターに体重を預けた。
突然だった為、ミスターはよろけそうになる。
それでも彼はすぐに体勢を立て直し、色彩を支える。
二人は幸せに包まれ、ただ微笑み合っていた。
「ふふっ」
無表情ながらも、色彩は目に見えて微笑んでいた。
「あははっ」
その笑顔が続いて欲しいと願い、ミスターも喜びで声をあげて笑った。
魔法に掛かったのように、二人は笑い合った。