えーご
「所詮僕は嫌われ者のままなのです」
悲しそうに、ミスターは色彩に言った。
「どうして? きみはすてき」
そこに色彩は優しく声を掛けてあげる。
その声が届かないことを知りながらも。
どんな言葉も、ミスターの傷を癒してはあげられない。
それに気付いていたが、色彩はそれでも優しく声を掛けた。
いつかその声が届くと信じて。
いつかミスターの深い傷が癒えると信じて。
「そこですよ。そちらがそんなことを仰るから、自分を嫌いな自分が嫌いになるのです」
不機嫌そうに言って、ミスターはそこに座り込んでしまう。
そんなミスターの気持ちは、色彩にとって理解し難いものであった。
彼が何を思うかはわかっても、なぜそう思うのかはわからなかった。
「嫌いにならないで。どうしてなの? きみは三位という順位を貰った。喜ばないなんて、投票してくれた人にも下位の人にも失礼。素直に喜びなよ」
必死の言葉も、ミスターの心には届いていなかった。
「わたし、悲しいよ。こんなにも愛情を注いでいるのに、それをきみは受け取ってくれない。初めて他人を大切に想った、それなのに。どうしてなのさ」
珍しく感情を露わにし、色彩はミスターにそう言った。
その言葉は盾を破り、ミスターの心まで届いた。
真っ直ぐ、真っ直ぐミスターの心を打った。
「……っ! ごめん。貴方が好きな物を僕が好きになる、そうです。僕は貴方が愛する者。愛する者が愛する者は、僕も愛する。少し自信が持てたような気がします、ありがとうございます」
顔を上げて、ミスターは嬉しそうにそう言った。
「ふふっ」
そんな自分に驚いて、可笑しくて笑ってしまっていた。
「あははっ」
その笑顔が嬉しくて、色彩も珍しく声をあげて笑った。
魔法に掛かったのように、二人は笑い合った。