しゃかい
「やっぱあたしって嫌われ者なのかな」
壁と一体化し、墾田ちゃんは問い掛けた。
とても悲しそうに。
「何言ってるのさ。見る目がないだけ。悪いところなんてないし、凹む必要もない。君がそう言ってくれたんじゃないか」
自信がなさそうにする墾田ちゃんは嫌だった。
元気いっぱい自信満々、らしい彼女でいて欲しかった。
だからパイは必死に微笑む。
自分を励ましてくれた墾田ちゃん。
今が恩返しのときだ。
元気を貰った分、元気にしてあげるんだ。
そう決意し、彼は後ろから墾田ちゃんを抱き締めた。
優しく、優しく。
決して傷付けないように、優しく抱き締めた。
「何するのよ」
本当は嬉しかったけれど、恥じらい墾田ちゃんはパイの手を払った。
優し過ぎたせいか、そのままパイの手は解けてしまう。
慌てて墾田ちゃんはそれを掴もうとするが、その手は空を切る。
結局救えず、パイはそこに尻餅を搗いてしまった。
「ごめん、大丈夫よね」
恐る恐る墾田ちゃんはパイに手を伸ばす。
壊してしまったのではないか。
その恐怖で、小さな手は震えていた。
「大丈夫だよ。ありがとう、こちらこそごめんね」
微笑んで差し出された手を掴む。
パイの温もりに、墾田ちゃんは一気に安心した。
もう震えてなんかいなかった。
「ふふっ」
温かくて恥ずかしくて、墾田ちゃんは乙女に笑った。
「あははっ」
目の前の乙女が可愛くて、パイは男に笑った。
魔法に掛かったのように、二人は笑い合った。