おんがく
「音楽が一番人気だよぉお♩」
楽しそうにシャープが踊り出した。
誰もがそのテンションに置いていかれる。
「皆、歌は好きでしょおぉお♪」
その言葉には、結構な人数が頷いていた。
「歌って踊りましょう。きっと楽しい筈だよぉお♫」
そう言って、再び回り出してしまう。
彼女を止められる者はいないと思われた。
「死ね。リア充め」
小さな声で呟いたのは、なんと墾田永年私財法だった。
驚いて、皆そちらに視線を向ける。
「墾田ちゃん、死ねはないでしょ。歌うのって楽しいじゃん。踊るのって楽しいじゃん」
短距離走が、無邪気な笑顔でそう言った。
強がりに笑い続ける彼女を、傷付けていることに気付かずに。
「自分がぼっちだからでしょうよ。カラオケに行く相手も、共に踊る相手もいない。それだけでしょうに、音楽のせいにしてどうするの」
とどめを刺したのはパイだった。
今回はわざと、わざと傷付けようとして言っている。
それでも墾田ちゃんは自信を失ってなどいなかった。
寂しさは感じているが、自信は確かだったのだ。
「音楽は交流。音楽は楽しみ。音楽は人生。心を潤す為、音楽は必要なんだぁぁあ♫」
それがシャープによる、最初の主張であった。