すーがく
「やっぱり、僕って嫌われているのかな」
皆の前では平然を装っていた。
しかし、第九位という結果を見て凹まない筈がない。
瞳にいっぱいの涙を溜め、パイは目の前の少女に問い掛けた。
「何を言っているの? それほどまでに素敵な人、他にはいないわ」
勿論墾田ちゃんは、パイを傷付けるようなこと言わない。
言い合いはよくするし、仲が悪いようにも見えるかもしれない。
『喧嘩するほど仲が良い』
それを現したような二人であった。
二人とも素直になれなくて、どうしても言い合いになってしまう。
それでも一人が凹んでいれば、励ますのが当然である。
それに、今は周りの目だってない。
最も恐れていたものがないのだ。
周りの目に怯えなくて済む為、普段よりも素直になれる。
それが玉結びの思惑だとわかっていたが、二人は乗ろうと思った。
折角用意してくれた場だから、大切にしようと思った。
「見る目がないだけ。きみに悪いところはないんだから、凹む必要なんてない」
優しく微笑んで、墾田ちゃんはパイを包んであげた。
小さな体で、それでもパイを安心させてあげる為に。
精一杯手を広げ、包み込むように抱き締めていた。
「何するのさ。こうゆうの、セクハラだと思うな」
口ではそう言いながらも、彼は嬉しさで溢れていた。
堪え切れないほど、溢れ出てくる嬉しさで。
「うっさいわね。逆でしょ? どう考えたって、そんなにやけてるきみがセクハラだよ」
不機嫌そうにパイを突き飛ばすと、墾田ちゃんはニッと笑った。
まるで子供のような、無邪気な笑顔を浮かべて見せた。
ずっと大勢の前で作っていた笑顔を、パイの為だけに。
心からの笑顔と言う訳ではない。
そしてそれを、パイも理解していた。
理解しているからこそ、頑張ろうと思った。
「ふふっ、そうかもね。可笑しいな、笑いが止まらない。ニヤニヤして、ほんとに気持ち悪いや」
涙を拭いて、パイは笑顔を浮かべた。
「ふふっ」
なんだか幸せで、パイは笑みが零れていた。
「あははっ」
パイが笑うと、満足したかのように墾田ちゃんも声をあげて笑った。
魔法に掛かったのように、二人は笑い合った。