とーひょーけっかをおとどけ
九人の元に届いたのは、第一回投票の結果であった。
人気教科の称号を夢見て、教科を背負い戦っていた九人。
この投票の結果と言うのは、どうしても恐れてしまう。
「開けてしまっても宜しいのでしょうか」
確認を取るように、かあさんはそれぞれの顔を見た。
いつも通りの冷静な微笑みを装っている。
それでも彼女の手は震えていた。
『投票結果をお届けします』
そう書かれた封筒を恐る恐る開く。
「あっ。二位だ。やった、嬉しいですね」
見た瞬間に、かあさんは声をあげて喜んだ。
ように見えた。
しかしパイははっきりと見ていた。
二位。
その順位に不満そうにした彼女を。舌打ちをした彼女を。
「何よこれ! どんだけ見る目がないのよ」
かあさんが全員に見せると、墾田ちゃんは不満気に叫んだ。
他の人は、その態度がいけないんだと感じ勝ち誇った。
八位という順位が気に入らなくて叫んだ、そう勘違いしていたから。
そう。見る目がなかったのだ。
「こんな投票、可笑しいよ。なんで、なんでこんなにも素敵な人が。第九位だなんて可笑しいじゃない!」
最後の叫びに皆驚いた。
墾田ちゃんは、自分のことを言っていた訳ではないのだ。
優しいパイが最下位である、その事実が気に入らなかった。
「そんな言葉、いらないよ。僕は君の敵さ。僕のことを言うくらいなら、自分の順位に文句を言ったらどうなの? お世辞にも高いとは言えないものだしさ」
嬉しかったんだ。
墾田ちゃんの言葉が嬉しくて、パイはいつの間にかそう言っていた。
本当は嬉しくて仕方がなかったけど、そう言うことしか出来なかった。
なぜなら彼は数学代表と言う枷を背負っていたから。
自分の教科が最下位だと言うのに喜んでいるだなんて。
それを表情に出せば、帰ったときになんと言われるか。
そんな恐怖もあって、パイはそう言うことしか出来なかったのだ。
「でも可笑しいよ。パイは優しいのに、それなのになんで」
一通り叫び、墾田ちゃんは無表情になった。
自分がいくら言ったところで、パイを困らせるだけだと気付いたから。
そして自分の順位を、嫌われていると言う現実を見る気にもなってきたから。
「なぜわたしが? もっと適切な人はいる。例えば、えぐ」
無表情で話す色彩の口を、ミスターが慌てて押さえた。
「勘弁して下さい。僕は英語代表なんですよ? 本名を晒されるのは少し困ります」
解散後に出会い、ミスターは色彩に本名を伝えてしまっていたのだ。
そして色彩だって、本名をミスターに伝えていた。
お互い、内緒だと約束し。
だから色彩だって、本当に言うつもりなどなかった。
ただ、ミスターの可愛い姿が見たいだけであった。
でもこれ以外の人たちは、投票結果に対して特に何も言わなかったのだ。
妥当と判断したか、酷く落ち込んでいるのか。
第一回投票結果をお届けしたので、第二回投票を開催させて貰います。