表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あなたはどのきょーかがすき?  作者: ひなた
だいにかいとーひょー
76/189

とーひょーけっかをおとどけ

 九人の元に届いたのは、第一回投票の結果であった。


 人気教科の称号を夢見て、教科を背負い戦っていた九人。

 この投票の結果と言うのは、どうしても恐れてしまう。


「開けてしまっても宜しいのでしょうか」


 確認を取るように、かあさんはそれぞれの顔を見た。


 いつも通りの冷静な微笑みを装っている。

 それでも彼女の手は震えていた。


 『投票結果をお届けします』

 そう書かれた封筒を恐る恐る開く。


「あっ。二位だ。やった、嬉しいですね」


 見た瞬間に、かあさんは声をあげて喜んだ。

 ように見えた。


 しかしパイははっきりと見ていた。


 二位。

 その順位に不満そうにした彼女を。舌打ちをした彼女を。


「何よこれ! どんだけ見る目がないのよ」


 かあさんが全員に見せると、墾田ちゃんは不満気に叫んだ。


 他の人は、その態度がいけないんだと感じ勝ち誇った。

 八位という順位が気に入らなくて叫んだ、そう勘違いしていたから。


 そう。見る目がなかったのだ。


「こんな投票、可笑しいよ。なんで、なんでこんなにも素敵な人が。第九位だなんて可笑しいじゃない!」


 最後の叫びに皆驚いた。


 墾田ちゃんは、自分のことを言っていた訳ではないのだ。

 優しいパイが最下位である、その事実が気に入らなかった。


「そんな言葉、いらないよ。僕は君の敵さ。僕のことを言うくらいなら、自分の順位に文句を言ったらどうなの? お世辞にも高いとは言えないものだしさ」


 嬉しかったんだ。


 墾田ちゃんの言葉が嬉しくて、パイはいつの間にかそう言っていた。

 本当は嬉しくて仕方がなかったけど、そう言うことしか出来なかった。


 なぜなら彼は数学代表と言う枷を背負っていたから。


 自分の教科が最下位だと言うのに喜んでいるだなんて。

 それを表情に出せば、帰ったときになんと言われるか。


 そんな恐怖もあって、パイはそう言うことしか出来なかったのだ。


「でも可笑しいよ。パイは優しいのに、それなのになんで」


 一通り叫び、墾田ちゃんは無表情になった。


 自分がいくら言ったところで、パイを困らせるだけだと気付いたから。

 そして自分の順位を、嫌われていると言う現実を見る気にもなってきたから。


「なぜわたしが? もっと適切な人はいる。例えば、えぐ」


 無表情で話す色彩の口を、ミスターが慌てて押さえた。


「勘弁して下さい。僕は英語代表なんですよ? 本名を晒されるのは少し困ります」


 解散後に出会い、ミスターは色彩に本名を伝えてしまっていたのだ。

 そして色彩だって、本名をミスターに伝えていた。


 お互い、内緒だと約束し。


 だから色彩だって、本当に言うつもりなどなかった。

 ただ、ミスターの可愛い姿が見たいだけであった。



 でもこれ以外の人たちは、投票結果に対して特に何も言わなかったのだ。

 妥当と判断したか、酷く落ち込んでいるのか。


 第一回投票結果をお届けしたので、第二回投票を開催させて貰います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ