ほけんたいく
「迷ったんだけど、やっぱサッカーだよな。女子だって楽しめるし、嫌いな人なんか存在しないと思う」
自信満々で、短距離走は断言した。
それをパイは悲しそうな表情で否定に入る。
単純にやりたくないから。現実を見せてあげようと考えたから。
「部屋の中でサッカーはやらないよね? でも僕らは、外になんか出られない。外へ出ることなんか許されないんだ」
パイの言葉に、皆俯いてしまう。
毎日九人で集まり、どうでもいいような会議。
それはただ、社会から隔離されているだけということ。
人気教科を決めるだなんて、そんなの口実。
それくらい気付いていた。
気付くに決まっていた。
でも誰も、決して口にはしなかったこと。
「天才過ぎるのも困るわよね。凡人は天才を嫌う、仕方がないことだわ」
不機嫌そうに墾田ちゃんが続く。
言い方はともかく、彼女の言葉は全く間違っていない。
彼女の言葉は正しかった、悲しいほどに。
「オレはここ好きだぜ? 一人の夜は寂しいけど、毎日皆と会えるのは嬉しい。そして何より、ここに来て友達が出来た気がするから」
笑顔は失わなかった。
さすがの短距離走でも、俯いてはしまっていたが。
笑顔だけは失わなかった。
ずっと笑顔でいれば、皆も笑顔になってくれる。
その言葉を素直に、彼は素直にも信じ続けていたから。
「それは同感です。妬みとか、そんな醜い感情しか貰ったことありませんでしたし。ここでなら、私の天才さも目立ちません。少し残念ですが、仲間や友と呼べる方が出来た気はします」
かあさんから発せられるその言葉には、驚く人も多かった。
それが墾田ちゃんの言葉なら、誰も違和感は持たなかっただろう。
かあさんだったからこそ、皆驚いたのだ。
「優秀なのに、どこが悪いって言うの!? 才能ないのが悪いのに、なんで才能持ってる人がこんな扱い受けなきゃなんないのよ。…………そのおかげで、大切な人には会えたけどさ」
怒りを爆発。というように、シャープは叫んだ。
それからも、天才たちは愚痴り続ける。
最終的にはただの愚痴り会のようになってしまっていた。
しかし天才たちには、時にそんな息抜きも必要だったのだ。
「第九回、ゲーム大会でしたっ」