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あなたはどのきょーかがすき?  作者: ひなた
ミスターエックス げーむ
73/189

びじゅつ

「お絵描きだよ。勝者はわたしの独断で決める」


 いつも以上の無表情で、色彩は画用紙を配った。

 そして、誰でも使えるように色鉛筆やクレヨン、絵の具などを用意して行った。


「お題は、好きな物。過酸化水素水に告げたものとは違う。本当に一番好きな物、描いて。わたしの心に響くよう、一生懸命描いてね」


 普段の様子から見れば、色彩はミスターにデレデレである。


 それでも彼女は美術代表であった。

 いかにミスターが好きであっても、決してそれでミスターの絵を選んだりはしない。


 そこはちゃんとしているからこそ。そこを他の人も知っているからこそ、一生懸命勝利を目指して絵を描いた。


「何? この遠回りな絵。わたしは知らない、素敵な感情。憧れ、素敵な絵。大事な物を伝えてくれる、とっても素敵な絵。だからわたし、この絵を一位に決める」


 無表情のまま皆の絵を見て回っていた色彩。


 しかしパイの絵を見たときだけ、彼女の表情は微かに動いた。

 一瞬柔らかい微笑みとなり、再び冷たい表情に戻る。その微かな変化を、パイは見抜き喜んでいた。


 美術代表に絵を褒められたこと。

 無表情な彼女を揺るがすほどの絵を描けたこと。


 そのことを、パイは実に素直に喜んでいた。


「もっといい絵があるかもしれないじゃん。本当に僕の絵でいいの? やっぱやめるとか、凹むからやめてよね」


 パイが描いていた絵は、墾田永年私財法であった。


 墾田ちゃんの絵を描いていた訳ではない。

 墾田永年私財法のイラストを描いていたのだ。


「彼女、大切にしてあげて。すぐに壊れてしまうから。きみが守らないと、わたしは壊してしまうよ」


 最後にそう言い残し、色彩はそれから一度もパイの絵を見に来なかった。


「一位、パイ。二位、シャープ。三位、倒置。以上」


 正直、判定は色彩の好みで行われていた。


 誰も文句は言えないけれど。

 だって彼女は初めから、独断で決めると断言しているのだから。


「第七回、ゲーム大会でしたっ」

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