しゃかい
「新しいものは作れなかったわ。ごめんなさいね」
謝って、墾田ちゃんは以前作ったゲームを配る。
新しいものは作れなかった。というのは、新作は作れなかったと言うだけの意味である。
真面目で努力家な墾田ちゃんは、全員分作って来たのだ。
新作を考える時間は足りなかった。
しかし人数分用意するくらいは出来たのだ。
彼女は秀才だから。彼女は何より努力する子だから。
「これは恋愛ものだから勝負は無理かな? って思って、作って来なかったけど大丈夫だよね。そもそも、男子がやるものじゃないだろうし」
墾田ちゃんは二つのゲームを勝負用にしていた。
戦争ものと、会社経営の二つだ。
皆で遊べるように、以前はなかった通信機能を。
「そうかな。男の僕でも十分楽しめたよ」
さりげなく墾田ちゃんにそう言って、パイはゲームの電源を付ける。
墾田ちゃん以外には聞こえない小声であった。
そうなるよう、パイはしっかり計算して言っていたから。
そして言ったあとも、不自然にならないよう普段通りの微笑みを装う。
計算し尽くされた彼の行動は、ちゃんと誰にも違和感を与えていなかった。
だから墾田ちゃんも、嬉しさを必死に押し隠していることが出来た。
パイが素直になってくれたから。パイが微笑んでいてくれたから。
墾田ちゃんはそのままでいられた。
「こうゆうゲーム、あまりやらないのですか?」
戦争もののゲームで最初は勝負した。
しかし勝負になんかなっていなかった。
桁違いの強さで、ミスターは他の人を圧倒していた。
「なんか、ゲームなのに難しいことばっか言ってやがる」
次は会社を営んだのだが、短距離走にはあまりにもレベルが高過ぎた。
彼はただでさえ出来ない。それなのに、わざわざ罠に陥れようとする人もいた。
だから結局、上手く利用されるだけの結果に終わってしまった。
「時間が時間だし、これで終わりにしようか。丁度一段落着いたし、文句はないよね」
皆が夢中になってゲームする姿を、墾田ちゃんは嬉しそうに眺めていた。
お菓子やジュース、昼食なんかも途中で用意した。
完璧な状況を整え、出来る限り夢中になって貰っていた。
「総合したら、一位はミスターエックスだね。んで、二位はパイかな。んでんで、三位はかんなと玉結びかな。ありがとっ☆」
嬉しそうな笑顔で、墾田ちゃんは順位発表をした。
「第四回、ゲーム大会でしたっ」