ぎじゅつかていか
「仲間のこと知れるって、いいな。仲間のことを知れるって、いいね」
かんな&玉結びは微笑みながら言った。
「そうですよね! 仲間のことを知るのは協力する為に重要だと思うのです。一人一人を理解して、それでこそ団結出来るんですよね」
同意の言葉が嬉しくて、かあさんはテンション上がり気味でいた。
「そんなことないよ。協力する必要ないじゃん? 相手を落とそうとしている、卑怯な手を使ってまで。それはあんたじゃんか」
しかしそれは気に入らなくて、墾田ちゃんはわざと不機嫌そうに言った。
自覚はあったので、かあさんも傷付いてはいた。
それでも彼女はめげない。
過酸化水素水は、強かったから……。
「団結なんてバカらしい。団結団結って何度も繰り返す人ほど、団結をする気なんかないんだ。一人一人を理解だって? 笑わせないでよ。いい子ぶっちゃって気持ち悪い、それは団結を希望するような人の行動じゃないわ」
気に入らないから、墾田ちゃんはめがない。
墾田永年私財法は、強くないのに。
気に入らなかったから、どうしても気に入らなかったから。
必死に戦ったんだ。強敵と、あのかあさんと。
「私は理解したいと思っています。いい子ぶっている訳ではありません。いい人でいたいとは思いますが、団結したいとも思っています」
墾田ちゃんに負けないように、かあさんは強く言った。
強い口調で、はっきりと言った。
そこまで言われてしまっては、墾田ちゃんも返せない。
「団結なんかいらないよ。戦いなんだから、一人一人の戦いなんだから。だから、団結する必要なんかないね」
怯んでしまった墾田ちゃんを守るように、今度はパイが言い出した。
彼自身はかあさんと戦いたいなんて思っていない。
だって彼はわかっていたから。
自分の弱さも、彼女の強さも。
「どうしてそんなに悲しいことを仰るのです? 団結は必要です」
強い志と心を持ち、かあさんは戦った。
何が相手でも絶対に負けない。
そんな決意があるから、かあさんは負けない。
「おいらの好きな食べ物はやっぱ焼き鳥だな! あの美味しさと言ったら、堪らない」
大きな声で、わざわざ大きな声でそう言った。
喧嘩を止めたいと思い、かんなは叫ぶように言った。
その声は微妙に震えていたんだ。
そしてそれに、たった一人だけ気が付いた。
「いいんですよ、無理しなくて。知っています、あなたが無理して頑張っていること。頑張り過ぎなくていいのです、あなた一人だけが」
優しく優しく、勘違いさせてしまうほどに優しく声を掛けた。
その言葉はしっかりかんな&玉結びに、ただ一人の胸に届いた。
「ありがとう。そう言って貰えて嬉しいわ。でもごめんね、私は……っ。私はこれからも、このままでいる」
傍に来てくれた倒置を突き飛ばし、玉結びは無理に笑った。
「いいんですよ、無理しなくて……」
励ましてあげようとしていたけれど、倒置は離れた。
倒置は悲しい微笑みで、その場を離れた。
彼の声も、ざわめきに紛れて消えて行く。
誰に届くこともなく、その声は消えて行った。
「どうゆうつもり? 今見ちゃったのよ。優しくしてあげていたこと。ず~る~い~、優しい声を掛けてよ。ね~、ねぇねえ」
微笑む倒置を発見し、シャープが駆け寄って来た。
それを見ると、倒置の微笑みは一気に冷たくなる。
悲しく温かい微笑みは、急に冷たいものになる。
「どうかしましたか? ふん。消えて下さい、耳障りです目障りです」
シャープが相手だからこそ、倒置もそう言うことが出来た。
シャープが相手だからこそ、倒置はそう言うことしか出来なかった。
それが彼女に向けた特別な優しさ。
それが彼なりの照れ隠し。
「なんで皆して喧嘩ばっかりなの!? 対決だから団結は出来ないかもしれない。それでもさ、どうして喧嘩ばっかりしてるのかわかんないよ」
驚いて一斉に声の持ち主を確認する。
取り乱して叫んでいたのは、ミスターなのだ。
「勝利する為でも、人を傷付けたりしちゃいけないと思う。仲良しでいろとは言わない、むしろ馴れ合いは嫌だ。僕はそんなの大嫌いだけど、人を傷付けたりしちゃいけないと思う」
その言葉に、色彩は胸を打たれた。
彼の言葉は彼女の心に届いた。
感動し、涙を流していた。
「そう、だよ。人を傷付けたら、だめ。こんなの常識だよ」
驚きながらも涙を拭きとり、色彩は微笑んだ。
「好きな物、ですか……。わかりました」
皆の様子を順に見渡し、かあさんは何かを悟ったように微笑った。
「ありがとうございます。皆さんの好きな物が知れて、とても嬉しいです」
過酸化水素水は笑った。




