びじゅつ
「何が違うの? わたし、質問。理科の人、質問。違い、わからない」
少し不満気に色彩は言った。
「違います。私は貴方のように無理に答えを求めたりしていません。傷付けてまで、何度も繰り返し問い掛けたりなどしていません」
その態度が気に入らなかった為、珍しくかあさんは強く言った。
彼女の表情には、怒りすら浮かんでいた。
それでも色彩は揺るがず、かあさんを退治しに掛かった。
「傷付けていない? 嘘だ。わたしの彼を傷付けた、確実に。最初からどう見てもこの企画を嫌がっていた。それなのに、おすすめ? 調子に乗らないでよ。無理に答えを求めているじゃない」
ミスターを傷付けた、その分はきっちり返させて貰う。
それが色彩の考えであった。
他の人がどれだけ傷付こうと関係はない。
どうなってもいいから、ミスターだけは守ってあげないと。
それが色彩の考えであった。
「そうゆうつもりはございませんでした。それに、嫌なら嫌と言えばいいではありませんか。しかし彼は答えてくれました、笑顔で答えてくれましたよ。確かに始めは嫌そうでしたが、笑顔でいてくれました」
負けずとかあさんも言い返す。
色彩とかあさんの喧嘩。
自分のことで喧嘩。
ミスターは見ていられなかった。
止めようかと思った。
それでも、止める勇気すらない。
そんな自分が嫌になり、ミスターは更に傷付いた。
「彼は、笑顔。羨ましいほど、眩しいほど笑顔。ずっと、ずっと笑ってくれてる。嫌なことあっても、笑っていてくれる。甘えないで」
色彩の褒め言葉すら、ミスターは心を傷付けていた。
そして、色彩はそれに気付き始めた。
だからそろそろ言い合いは終わりにしようと考えた。
そろそろかあさんを退治しようと。
止めを刺してやろう、と。
「きみの作り笑顔とは違う。きみの演じた優しさとは違う。人を避けない、逃げない。彼は戦っているの、邪魔はしないで」
思った通り、色彩の言葉はしっかりかあさんに止めを刺した。
「ありがとうございます。色彩さんの好きな物が知れて、とても嬉しいです」
過酸化水素水は笑った。