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あなたはどのきょーかがすき?  作者: ひなた
過酸化水素水 えがお
59/189

すーがく

「倒置くんは予想通り、と言った感じだね。そのまんまじゃない」


 平和な表情で、パイはからかうようにそう言った。


 倒置はそれを気にも留めない。

 返しがわからない。だから返すことが出来ない。それもあった。


「では、パイさんは何がお好きなのですか? 教えて下さい」


 空気を癒す笑顔で、かあさんはパイに問い掛けた。

 和やかな雰囲気、いかにもそういった感じである。


「え~、そんなの興味ないよ。人の好きな物なんか知ってどうするのって感じだし」


 その雰囲気が落ち着かなくて、わざと墾田ちゃんはそんなことを言った。


 そうした方がパイも言い易いだろう。

 実はそんな気も遣っていた。


「どうしてそんなことを仰るのですか? 贈り物をするときなどに迷わなくて済むではありませんか。パイさん、どうぞ」


 優しく墾田ちゃんに笑い掛け、かあさんは司会として進行した。


「好きな食べ物は、ジャンル的に見れば果物かな。りんごとか、さくらんぼとか。倒置くんと一緒でそのまんまかもだけど、やっぱ計算するのは好きなんだよね。数字大好き、数字は大事な友達……。ごめんなさい」


 途中までは笑顔で調子よく話していた。


 しかし、だんだん自分の言っていることが悲しくなってくる。

 そして最終的には謝るような結果となってしまったのだ。


「何が数字は大事な友達よ。どんだけ寂しい人なの? ふん、友達くらいいるでしょうよ」


 凹んでいるパイに対し、容赦なく墾田ちゃんは冷たい言葉を浴びせた。

 ようにも思えただろう。


 墾田ちゃんはそんなに悪魔じゃない。


「少なくとも、あたしはあんたと友達だと思ってる。違うの? そっちは友達とも思ってくれていないんだ」


 意地悪に口元を釣り上げる。


 そんな表情が、パイにとっては女神にも感じられていたのだが。


「ありがとう。でも僕はきみと友達でいるつもりはない」


 嬉し過ぎて、また少しツンデレが発生していた。

 あまりにも嬉し過ぎて、少しだけドSモード突入であった。


 予想外のパイの言葉に、墾田ちゃんは素直に傷付いてしまっていた。


「いつか、きみのことを嫁に迎えるんだから。今は友達でも、いつかきっと……」


 頬を真っ赤に染めて、パイは言っていた。

 言い終わるとあまりの恥ずかしさに、水色の髪で真っ赤な顔を隠してしまっていた。


「はいはい、わかったわ。待ってるから、精々頑張って頂戴ね」


 パイが素直になればなるほど、墾田ちゃんは素直になれなかった。


 本当は大好きなのに。

 素っ気ない様子で、そう返すことしか出来なかった。


「うん、待っててね」


 しかしそれもパイは気にしなかった。


「ありがとうございます。パイさんの好きな物が知れて、とても嬉しいです」


 過酸化水素水は笑った。

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