おんがく
「あぁぁぁああ~♪」
暇だ。
そんな感じにシャープは一人歌って踊っていた。
そして色彩に疑問を持たせてしまった。
「どうして元気を装うの?」
テクテクと歩いて行き、小さく首を傾げた。
「装ってなんかいないよぉおお♪」
揺るがずに、シャープはとりあえず返すことが出来た。
「どうして元気を装うの?」
しかし色彩が引き下がる筈がない。
今までもそうだったように、同じ質問を繰り返す。
シャープに問い掛ける色彩を見て、それぞれがいろんな感情を持っていた。
倒置やかあさん、墾田ちゃんなんかは憐れみを感じていた。
パイはシャープを憐れむと同時に、苦しめと望んでいた。呪うくらいの勢いで……。
ミスターはシャープのことなど見ず、色彩に見惚れていた。
そして、尋問を受けていない短距離走とかんな&玉結び。
短距離走は「装う」という言葉の意味が理解出来ていないので論外。
かんなは色彩の質問が不快だった。玉結びは問い掛ける色彩の姿を微笑ましく思っていた。
かんなや玉結びのキャラではなく、本人はその質問の答えを求めていた。
元気を装う理由を知りたい、少しだけそう思っていた。
「笑顔の方が、幸せな気がするから。今は楽しいと自分を錯覚させる為、あんたにもおすすめするよ」
同じ質問を二回され、逃れることは出来ないと悟るシャープ。
一瞬だけ笑顔を消し、色彩の耳元で吐き捨てるように言った。
そのあとはすぐにまた笑顔に戻る。
その表情の変化には、よく見ていないと気付かないだろう。
「ありがとう。知らないことを教えてくれた、感謝する。ありがとう」
お礼を言われて、シャープは喜びを示すように歌い出そうとした。
しかし、色彩が向ける笑顔に驚いてしまう。
その恐ろしさに声が出なくなってしまう。
「……え、ああ」
引き攣った笑みを浮かべるシャープ。
自分の担当教科すら、シャープは完璧でいられなかった……。