しゃかい
「もう一回ゲームやる? 折角このあたしが作ったものだし」
ニヤリと笑い、墾田ちゃんは手作りゲームを出してきた。
「パソコン用のゲームも作ってきたから、パソコン貸して貰えるかな」
墾田ちゃんに言われて、かんながパソコンを差し出す。
そして皆ゲームに喰い付いた。
しかし、色彩は謎の追及で忙しい。
かあさんや墾田ちゃんをあれだけ取り乱させた。それなのに、色彩はまだ懲りなかった。
だって知りたいから。わからないから、知っていそうな人に問い掛けるのだ。
「どうやって表情を作っているの?」
色彩にはわかっていた。
パイの表情は全て作られたものだ、と。
確かに彼は素直である。
素直ではあるけれど、それを表現するのは得意じゃないのだ。
つまり、色彩と同じなのである。
この二人の違いは、表情を作ることが出来るかどうか。
「失礼だね。作っているはないんじゃない? きみに隠せるとは思ってないけど」
天才は無駄なことをしない。
「どうせ独りだし、一人で練習を。練習すれば、笑顔くらいは覚えるよ。きみは賢いしさ」
無駄なことは言わず、笑顔で質問に答えた。
初めて質問に答えて貰えた。
なんだか、それだけでも色彩は嬉しかった。
「ありがとう」
お礼を言うと、色彩は早速練習し始めた。
「上手に笑えてるかな」
偶然そこにいた墾田ちゃんに問い掛ける。
その笑顔の恐ろしさに、墾田ちゃんは目を奪われる。
手作りの地理クイズも、タイムオーバーだ。
「え、ええ。いいと思うわ」
愛想笑いを浮かべる墾田ちゃん。
自分の担当教科すら、墾田永年私財法は完璧でいられなかった……。