りか
「私は理科が一番人気だと考えます」
次に語り始めたのは、かあさんこと過酸化水素水だった。
「だって誰もが虫や動物、植物などを好むではありませんか」
優しく微笑むかあさんの言葉に、何人かが頷いていた。
その中でも特に共感していたのは、色彩と短距離走だった。
「よく、スケッチする。自然は大好き」
無表情のまま、色鉛筆をシャキーンと見せた。
「オレも自然は大好きだぜ。虫なんか、よく捕まえて遊ぶもん」
そして賢いかあさんは、少し卑怯な手段に出ようとする。
ニヤリと笑い、四つの箱を持って来させる。
「ほら、素敵だとは思いませんか? ご覧下さい」
少女には可愛らしい花たちが咲く植木鉢を差し出す。
そして少年には様々な虫が動く虫かごを差し出した。
これくらいの歳の少年少女は、皆それに興味を持ってくれるのだ。
それを、かあさんはしっかり理解していた。
しかしそれで釣れない子だって勿論いる。
「これもどうぞ、ご覧になって下さい」
倒置には図鑑を渡した。
大人びていても倒置だって子供。
読みたい。その欲望に逆らうことなどできず、手に取って読み始めてしまう。
このように、かあさんはそれぞれに合ったものを渡していく。
「皆に理科が癒しを与えているのです。なかったら楽しく生きられなくなってしまうのでしょう」
それが過酸化水素水による、最初の主張であった。