おんがく ~倒置はシャープに恋をした~
「あなたの為なら、唄だってすらすら書けちゃうよ。勿論、詩もさ」
倒置に壁ドンして貰ったので、シャープは倒置に向かってそう言っていた。
音楽と国語の共通点を懸命に探したのだ。
そして見つけたのが”うた”なのである。
「わかりません、どうゆう意味なのか。ごめんなさい、読解力が足りないようです」
しかし、シャープの言葉の意味は倒置に伝わらなかった。
頭がよく、勉強の出来る倒置。
だからこそ、乙女心には鈍感で仕方がなかった。
「そうやって言われちゃうと、さすがに恥ずかしいかな。一応恥くらいは感じるんだよ? 説明を求めるのは止めて欲しいな」
素直に倒置が首を傾げているので、さすがのシャープも恥じらいの表情を見せていた。
「求めてはいませんよ、別に」
冷たかった。
素直な表情に騙されて、シャープは恥らっていた。
でもそのシャープに対し、倒置は冷たかった。
冷たい表情に変わってしまい、シャープに冷たい視線が注がれた。
「あぁあぁあああああ♩」
倒置の冷たい視線に、シャープは耐えられなかった。
耐えられなかったから、歌って誤魔化したのだ。
大声で歌うことで、寂しさと恥を誤魔化したかったのだ。
歌声のせいで、倒置の小声は掻き消されていた。
意外にもツンデレな、冷たい表情で発せられる彼の言葉。
その言葉は、その声は確かにシャープに届いていた。
「でも思いますよ、可愛いと。素敵だと思います、照れ隠しの姿は」
シャープは倒置をときめかせることが出来た。