しゃかい ~パイは墾田永年私財法に恋をした~
「あたしってさ、今まで現実を生きていなかったの。一日の半分はネット、それ以外の時間もゲームとか。勉強はしてたから救いようはあったものの、そんな感じだった。でも、君に会って全てが変わったの。だって、君と出逢って喜怒哀楽を知ったから」
墾田ちゃんはアドバイサーとしては優秀だった。
でも、自分のターンで何を言うかは考えていなかった。
だから自分の素直な気持ちを語ることにした。
「元々は喜びと怒りくらいしか知らなかった。そもそも、声を出す術すら忘れていた。今のあたしがあるのは君のおかげ」
そこまで言って、墾田ちゃんは声を整える。
「君はもう、あたしの中の一番だよ? 沖田さんよりも好き♡」
可愛らしく、笑顔で墾田ちゃんはそう言った。
全員に言っているようだが、彼女の視線はパイ一人に向けられている。
その言葉も、完全に一人に向けられたもの。告白の答えであった。
「あんたの言葉が本気だったかわかんないけど、これは本っ気だから。わかってるよね? それくらい」
さすがに恥ずかしく、歩き去る墾田ちゃん。
パイと擦れ違うとき、小声でそう囁いていた。
その言葉にパイは驚き、一人顔を綻ばせていた。
「本気に決まってるじゃん。僕はわかってるから、君もわかってよ」
墾田永年私財法はパイををときめかせることが出来た。