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しゃかい
「社会はあたしの教科。批判なんて出来る筈ないわ」
胸を張って墾田ちゃんはそう言った。
「歴史面白くない」「地理面白くない」
かんな&玉結びがそう言った。
口は一つしかない。
だが、二人同時にそう言ったのだ。
歴史と言ったのがかんな、地理と言ったのが玉結びだ。
言っていることはかなり低レベルだ。
しかし、高度な技術を心得ていた。
「公民の方が面白くないじゃん」
そう言ったのはパイである。
「面白くないって、何がさ。具体的に言ってくれない?」
墾田ちゃんの言葉は尤もであった。
「覚えることが多過ぎてよ。ほんと、苦痛でしかない」
そう言うかんなを墾田ちゃんは鼻で笑う。
なぜなら、社会に非はないから。
悪いのは記憶力であるから。
「苦痛なのはあんたの顔でしょ? 批判すべきはあんたの記憶力でしょ? クズはあたしに近付かないでね」
反論しようとしたが、墾田ちゃんはそれを許さない。
「まだ何かある? まさか、ないわよね」
冷静な笑顔の墾田ちゃんに、それ以上誰も何も言えなかった。
墾田ちゃんは説得に成功し、優秀さを証明した。