りか
「批判? ふふっ、ご自由に」
かあさんのものとは思えない、不気味な表情であった。
初めはいい子を演じていた。
しかし、化けの皮が剥げて来たと言ったところだろう。
「理科も数学と同じだよ。クズが学んでも仕方がないんじゃないかな」
素直な笑顔で、パイははっきりとそう言った。
彼の視線は完全に短距離走に向けられている。
「そんなことありません。理科は娯楽ですからね。色彩さん、動植物を調べて楽しいでしょう? 実験をしたり、星を眺めたり、皆様理科を楽しんでいる筈です」
この場では批判をする。
だから、肯定の意を表す言葉を述べたりはしない。
「最低限の、知識。わたしが好むは、あくまでも絵」
まさかの色彩の否定に、かあさんは驚いていた。
……筈がない。
彼女はそれも想定内だったのだ。
「ですよね? 理科は最低限必要です。今の人は皆理科に頼りっぱなしです」
その程度で全員を説得出来はしない。
それだって、かあさんの想像通りだ。
「環境を大切に、理科だよね? でも、環境を破壊するも正直理科さ。分野がバラバラだね、纏まりを持とう。社会も全く同じことが言えるんだけどさ」
墾田ちゃんが何を伝えたいのか、まだわかっていなかった。
彼女が、社会も少しだけ否定した。
そのことはかあさんも予想外であった。
「社会と被ってるのよ! てかさ、理科はいろんな教科と被り過ぎね。必要ないってことじゃない」
それはかあさん自身も少し思っていることであった。
理科を完璧にすると、他の教科も何と無く出来たりする。
逆に言えば、他の教科が完璧なら分野によっては出来るということ。
「地学とかは別に……」
「地理と微妙に被るっての! オーロラのときかな? どこでとかを説明してるのに、原理聞かれても困るっての」
かあさんの言葉を遮って、墾田ちゃんはそう言った。
それは最早理科の批判ではない。愚痴である。
「他に何か? 遠慮なさらずにどうぞ」
不気味な笑みを浮かべるかあさんに、それ以上誰も何も言えなかった。
かあさんは説得に成功し、優秀さを証明した。