すーがく
「批判したきゃどうぞ。ただ、通じる言語を使ってくれると嬉しいね」
笑顔、笑顔だった。
パイの表情は、笑顔そのものであった。
無垢な瞳には、軽蔑だけが映されている。
「数字があまり多くても、理解出来なくて困るぜ。あんなん、使い道ないしさ」
数字アレルギーを自称する短距離走がまず言う。
しかし、パイは倒置ほど優しくなかった。
倒置ほどの国語力ではなかった。
倒置の場合、省略などを使って言う。
そんなものが短距離走に通じる筈がない。
冷たい眼差しも、彼が気付く筈がなかった。
「数学の批判じゃないよね? それ。てかさ、よく恥ずかしげもなくそんなことを言えるよね。自分のクズっぷりを、数学のせいにするのはやめてくれるかな」
そこで終わるかと思われた。
でも、パイはそんな奴じゃない。
息が切れてしまっただけだ。
大きく息を吸うと、もう一度喋り出した。
「恥すら知らないの? だったら、人間じゃないかも。目の癒しにも腹の足しにもならなそうだし、死んでみたらどうなのかな」
このまま放っておく訳にもいかないので、かあさんが静止に入った。
そう、思われた……。
「そのようなことを仰らないで下さい。力しか取り得のないお方なら、雑用係としてでも使えばいいではありませんか」
かあさんのその言葉には、パイ以外の全員が驚いた。
しかし、パイだけは驚いていなかった。
「それもそうだね。じゃあ認めよう。数学を学ぶ意味なんかないね。クズはどうせクズだし、学ばれる数学が可哀想」
パイは自分の教科の非を認めることで、優秀さを証明した。