ほけんたいく
「体育祭開こう。チーム分け、行くぜ」
皆が喜ぶと思い、短距離走はそう言った。
しかし、喜んでいる人は少なかった。
「不参加ってあり? あたし、そうゆうの嫌いなの。嫌いも嫌い、大嫌いなの」
嫌がる人を代表して、墾田ちゃんはそう言った。
頷く人も多くいたのに、短距離走は気にしない。
人々の嘆く声は、決して彼の耳に届かなかった。
「うん、遠慮したいかな」
墾田ちゃんの声が届かなかったので、今度はパイがチャレンジした。
それでも、短距離走はまだ気付いてくれない。
「体育さー」
倒置は言えもしなかった。
彼には運動神経がなかったから。
近付けば聞こえるんじゃないか。
その考えは間違っていなかった。
しかし、辿り着く前に倒れてしまう。
小走りをしたら、なぜか転んでしまった。
それほどまでに、運動神経という概念が存在していなかったのだ。
「リアルのフィスティバルは好まない」
帽子で顔を隠しながら、ミスターはブツブツ言っていた。
「へっへ。楽しみだぜ」
かんなは楽しみそうにしていた。
その声は短距離走に届く。
そして彼は皆がその意見と勘違い。
「都合のいい耳ね。信じられないわ」
どんなに言っても、墾田ちゃんの声は届いていなかった。
「痛いです、足が」
倒置は三角座り。
もう顔を足に埋め、行動不能状態であった。
「やっふぅー!」
そんな彼にすら気付かず、短距離走ははしゃいでいた。
その様子を見て、かあさんは強制終了術を使うことにする。
体育祭を開催させることなく、一日を強制的に終わりへと導く技を。
自分自身に、短距離走は楽しい時間を提供した。
「保健体育最高です」
短距離走による保健体育の魅力紹介は、過酸化水素水の声で幕を閉じた。