しゃかい
「ゲーム、好きでしょ? このあたしが一昨日、一生懸命作ってあげたの。皆にやらせてあげるわ」
そう言って墾田ちゃんが取り出したのは携帯ゲーム機。
数学の魅力紹介で墾田ちゃんが作っていたのはこれだったのだ。
社会代表であるから、内容は全て社会に触れている。
ただ、何個か触れてはいる程度のものもあったが。
一つ目は、歴史ゲームであった。
歴史ゲームなのだが、ここにも二種類あった。
戦国時代の武将で作られた戦争もの。
もう一つは、幕末をイメージされたBLもの。
両方とも、墾田ちゃんの趣味や好みは影響されていなかった。
そのものが趣味なだけあって、内容はしっかりしている。
二つ目は、観光地巡りといった感じの題材である。
墾田ちゃんが撮って来た、世界各地の写真も使用されている。
そして三つ目は、会社を経営しようというものであった。
法律や税金など、妙にリアルに作られていた。
このゲームで成功出来れば、実際に会社を起ち上げても大丈夫なんじゃないか? そう思えてしまうほどに、墾田ちゃんはリアルさを求めていた。
「作れたんだね。どんだけの出来か、僕が確かめてあげる」
そんなこと言いながらも、パイはただやりたいだけであった。
墾田ちゃんが作ったゲームを、プレイしたいだけであった。
さすがの墾田ちゃんもそれはわかっている。だから自慢げに笑い続けていたのだ。
「ごめん、全員分は作れなかった。代わりって言ったらなんだけどさ、ちょっと来て。ゲームが空いていない間は、これでも食べて待っていたらどう?」
四つのゲームはもう墾田ちゃんの元に残っていない。
入手できなかった人の為にと、墾田ちゃんは色々なお菓子を取り出した。
旅行に行ったときに買ってきた、その場所限定珍しいお菓子である。
ちなみに、ゲームを最初に入手したのはこの面々だ。
戦争ものはミスターであった。
最早神とも言えるテクニック、誰もが感心するレベルだ。
BLものを勝ち取ったのは、かんな&玉結びであった。
目を輝かせながらも、寂しそうな瞳をしていた。完全に入り込んでいて、周りのことなど見えていないと言った感じ。
観光地巡り、それを勝ち取ったのは勿論色彩。
美しい景色に見惚れていた。色鉛筆を握り締めながらも、絵を描くことなく見入ってしまっていた。
会社経営を、パイは入手していた。
真剣な眼差しで、ゲームの画面を見つめていた。全て計算し尽くし、もし問題が発生しても完璧に対処していた。
彼からしてみれば、そのゲームすら簡単であっただろう。
「皆に遊んで欲しいと思う。だから、ちゃんと貸してあげてね? 一人でずっとやってちゃダメだよ」
その言葉だけを聞くと、墾田ちゃんがかなり大人に見える。
実際は、皆にやって皆に褒めて欲しい。そんな子供っぽい、可愛らしい言葉だったのだが。
「不具合があったらあたしに言って? すぐ治すから」
そんなことは言っても、不具合なんて全くなかった。
墾田ちゃんが作ったゲームは、市販のものよりも完璧なほどであった。
素直な子供たちに、墾田永年私財法は楽しい時間を提供した。
「社会最高(#^.^#)」
墾田永年私財法よる社会の魅力紹介は、パイの声で幕を閉じた。