ほけんたいく ~かんな、走ることも出来るぜ~
「走れ! それが全てに決まってる。それに、それだったら皆楽しいだろ? 体を動かすって、最高だからな」
一人ハイテンションで、短距離走は言っている。
しかし、そのテンションに着いて行けているのはたった一人。
それも、意外な人物であった。
「そうかもしれませんね。走ることで全てわかると思います!」
かあさんだ。
理科代表。あの、過酸化水素水だ。
彼女が叫んだのである。
短距離走に同意して……。
誰もが耳を疑った。
かあさんのハイテンションは初めてだったからだ。
そして、とても意外だったからだ。
「そうだ。じゃあ、ちょっくらそこをダッシュだな」
そう言って、短距離走は一人走って行った。
そして手招きする。
「舐めんなぁあ!!」
いきなり大声を出し、かんなは全力ダッシュ。
他の人もそれに続く。
しかし、結局一位はかんなだった。
倒置は途中リタイアしてしまっていた。
五十メートル少しの距離、走り切ることが出来なかったのだ。
本人は走り切りたいと言った。
ところが、呼吸困難レベルだったのだ。
「ダントツ一位、だな」
かんなは得意げに笑う。
玉結びの面影を全く残さない笑顔。
本当に別人かのように思うほどであった。
「かんな、走ることも出来るぜ」
九教科目、保健体育の勝者が決まった。