表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
185/189

社会&数学

「たっだいま」


 嬉しそうな笑顔で、有紗は帰宅。

 扉を思い切り開け放った。


「有紗ちゅわ~ん! さすがだね。有紗ちゃんの頑張り、お父さんはずっと見てたよ。圧倒的な大優勝だったね」


 有紗の姿を確認した瞬間、父が強く抱き締めた。

 母も共に褒め称え、二人揃って久しぶりに見る、成長した娘の姿に感動した。


 一通り愛でると、二人は有紗を部屋まで連れて行きご馳走を並べた机を見せる。


 それに目を輝かせるが、有紗は首を振った。


「あたしね、お嫁に行くの。だから二人とも、ちょっと待ってて。夕方までには帰るからさ」


 有紗のその言葉で、両親が一斉に智也を見る。

 ずっと有紗の隣にいたのだが、気のせいだと目を逸らし続けてきた存在。


 娘が男を連れ込む筈などないと、無視を貫いてきた存在。


 しかし有紗にそう言われてしまうと、その姿を認めざるを得なかった。


「認めてくれないなら、あたしはこのまま帰って来ないんだから。勿論、認めてくれるわよね」


 脅すようにして、有紗は両親に詰め寄る。


 そんな脅しをされてしまっては、二人とも頷くしかなかった。

 有紗に嫌われたくないという思いで、二人は仕方がなく頷いた。


 それに、有紗の選択を信じてみよう、と言う思いが強かったから。


「じゃっ、あっちにも挨拶してくるっ」


 楽しそうに言うと、有紗は智也の手を掴んで家を飛び出して行った。



「ただいま」


 久しぶりの帰宅、智也の足取りは重かった。


 敗北してしまったからだ。


 やはり、誰も出迎えてはくれない。


「敗者がのこのこ帰ってくるたぁ、何事じゃ」


 リビングへ向かうと、父が笑顔でそう言った。

 強そうないい方を努力しているのはわかるが、智也同様男らしいとは言えない体付きであった。


 面白い人だね、と有紗は笑う。


 その姿を見て、父も母も一斉にそちらを見た。


「幻かと思えば、本物かい? 智也が女の子を連れてくるなんて」


 母はよろよろと歩み寄り、有紗の手を掴んだ。

 そして人間だと判断すると、酷く驚愕した。


 その言い方に、智也は少し不満気な顔をする。


「五月蝿いな。僕だって、僕だって彼女くらい出来るもん」


 鬱陶しそうに言う智也に、二人は更に驚愕した。

 その後、大爆笑である。


「聞いたかい? 智也が彼女だってよ」


「ああ、聞いた。智也の彼女になるたぁ、物好きな子もいるもんだな」


 余りに笑うので智也は頬を膨らませる。

 そんな三人の様子を見て、有紗は楽しそうに笑った。


「あたし、嫁に来るから。宜しくね」


 感じている筈の緊張や恐れを全く見せず、有紗は可愛らしく笑う。


 そして智也だけじゃなく、両親までを連れ出した。

 挨拶と言って、自分の家に招待したのである。


 二家族はご馳走を味わい、昔からの友人かのように、楽しく笑い合っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ