最終勝者
「結局、最も人々の好意を得ることが出来たのがぼくらのようです。さすがに全員で、って訳にはいきませんでしたね」
美しい髪を靡かせて、徹は微笑み呟く。
人気を得た者だけが部屋に集められている。
九人で一緒にではなく、三人だけ。
その三人は喜ぶべきなのだろうが、三人ともどこか残念そうな表情である。
「皆、やっぱわかってるわね。さっすがあたし! 超絶美少女なんだから困っちゃう」
出来る限り明るい顔をして、有紗はそう言った。
しかし彼女が望んでいたのは、九人全員の勝利。
敵じゃない。ライバルでもじゃない。仲間? 友達だ。
友達の勝利を望んでいた。
「勝者、嬉しい筈。でも、あまり、嬉しくない」
わからない。と言うように首を傾げ、彩音は呟いた。
「もっと喜びなさいよ。勝ったのよ? ここで喜ばないなんて、敗者に悪いってもんだわ」
寂しそうな表情ながらも、精一杯の笑顔で有紗は言う。
そんな彼女を見て、徹も笑顔に見せかける。
だから彩音も、二人の気遣いに気付き嬉しそうな表情を作る。
「あ、あんたは大丈夫。無表情の方がらしいから」
そして作られた彩音の表情の、その恐ろしさに有紗は止める。
どうしてかと思いながらも、有紗がそう言うので彩音は表情を消す。
感情表現を出来るようになったとはいえ、大体いつも無表情である。
今だって、気遣って作られた笑顔。
本当は悲しいのだ。
そして悲しみの表し方はまだ知らないから、無表情は作ったものではない。
「次は能力や優秀さが決まります。全教科勝利ではなく、そちらではぼく一人での優勝を狙いますよ。国語の魅力、しっかり伝えたつもりですから。容赦はしません」
強い口調でそう言った徹は、美しく笑った。
その後、可愛らしい笑顔を浮かべる。
儚げな雰囲気の彼だから、その笑顔は珍しいものだった。
「それはあたしの気持ちよ。負けないんだから」