表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
181/189

保健体育

「オレも勇気を出そうと思う。お前らが本当にオレのことを信じてくれているなら、オレだけが疑っている訳にもいかないしな」


 いつも通りにではなく、元気な笑顔を浮かべていた。

 下手糞な、本当に下手糞な作り笑顔。


 それはつまり、今まで素直に笑って来たと言う証拠。


 保健体育代表であった少年の、珍しく見せる悲しげな表情。

 周りを悲しくさせるが、周りを笑顔にもさせる表情。


「オレは短距離走なんて名前じゃない。本当は相田啓太あいだけいたっつうんだ」


 元気を装いそうは言うものの、やはりその表情は悲しみ。

 悲しみ色に、染め尽くされてしまっていた。


「お別れみたいな顔しないで下さい。この時間はなくなるけれど、一生会えない訳ではありません! それに、思い出は永遠にずっと隣にいてくれます」


 優唯は啓太の笑顔が大好きだった。

 だからそれを見たくって、儚げな表情でそう言った。


「そうだな。オレらはダチだもんな! 余計なこと考えるなんて、オレらしくもないしよ」


 何かが吹っ切れたかのように、啓太は元気な笑顔を浮かべる。


 そしてそれに対し、一斉に全員が笑顔を返した。

 部屋いっぱいに大きな笑顔が咲いたような気がした。


 成長して、信頼し合えた九人だから……。


 相田啓太と言う少年の勇気。

 終わりで悲しみに満ちる筈の一日も、始まりの喜びに思えた。


「皆を信じたんですよ? 絶対に、絶対にこれからも一緒にいて下さい。このぼくの、こんなぼくを……。見捨てないで下さい」


 誰にも聞こえないように、ポツリと呟き部屋を出る。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ