おんがく ~玉結び、歌だって歌えちゃうよっ~
「テストはもう疲れたよねぇえ♪」
いきなり歌い出すシャープ。
それに、短距離走は大きく頷いていた。
「歌の上手さで決めるよぉお♫」
その言葉に、何人か勉強派の人達が反応する。
人前で歌うことに抵抗のある真面目ちゃんは戸惑う。
「だって、そっちの方が楽でいいでしょ。ねっ?」
歌わずに、可愛らしくそう言った。
しかし、誰もそれに触れはしなかった。
可愛らしいよりもぶりっこの方が強かったからだ。
「わかった。最初に歌う」
誰も最初に歌うことは拒む。
だから色彩が手を挙げた。
恥ずかしがってるくせに、勇気を出して手を挙げた。
「曲は自由にどうぞぉお♫」
その歌に頷き、色彩は恥を捨てた。
大きく息を吸い、大好きな曲を歌い出す。
"歌"と言うよりは、"曲"であった。
美術代表らしい選曲。
そして、とても綺麗な歌声だった。
「上手だね」
歌が終わると、ミスターは笑顔で賞賛した。
彼の拍手に続け、他の皆も一斉に拍手をした。
「ミーが続く」
色彩の勇気を無駄にしない為、ミスターも手を挙げる。
一生懸命、ミスターはアニソンを熱唱。
歌唱力はそれなりに、と言ったところだ。
二人の勇気のおかげで、他の人も続くことが出来る。
「歌、下手過ぎでしょ」
墾田ちゃんは、珍しく恥じらいの表情を見せていた。
恥ずかしそうに必死に歌った歌を、パイはバカにする。
可愛い。
そう感じてしまっていた。
だからそれを誤魔化すように。自分の気持ちに背を向け、そう言ったのだ。
「下手な歌を聞かせてしまい、申し訳ございません」
一番歌が酷かったのはかんなだった。
本気で壊滅的だ。他の人も、耳が可笑しくなってしまいそうだった。
だからさすがの彼も真剣に謝罪をした。
彼に非がないことはわかっているので、誰も文句は言わない。
「一番上手だったのは、玉結びかなぁあ♬」
全員が歌い終わると、シャープがそう発表する。
その言葉には誰もが驚いた。
なぜなら歌ったのはかんなだけだったから。
「玉結び、歌だって歌えちゃうよっ」
六教科目、音楽の勝者が決まった。