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あなたはどのきょーかがすき?  作者: ひなた
文字に現れる想い
165/189

数学

「僕に、投票してくれたの?」


 自信はなさ気だが、パイは墾田ちゃんに問い掛ける。


 それを見て、墾田ちゃんは笑った。

 不機嫌な顔をしていた彼女が笑った。


「当然でしょ? あんたの頭の良さを見せ付けられたら、魅力は感じちゃうよ。残念ながら、楽しそうとは思えないけどね」


 素直に褒めるのもなんだか照れ臭くて、墾田ちゃんはわざわざ最後に付け加えた。

 彼を傷付けないよう、しっかり言葉を選びながら。


 そんな気遣いもことあってか、パイはそれを気にも留めなかった。


「ありがとう。そう言って貰えて嬉しいよ」


 嬉しそうに、心から嬉しそうに笑った。

 パイのその笑顔に、墾田ちゃんも嬉しくなって笑った。


 満面の笑みのまま、パイはもう一枚の紙を取る。


「これは、どなたのでしょうか」


 それは、酷く汚い文字だった。


 数学。そう読むことすら限界の、酷い文字。

 しかし他人に興味を示さないパイは、それが誰のものかわからない。


「オレだぜ。お前が凄いってなって、オレが入れた!」


 その文字を確認し、短距離走が元気よく手を上げた。


 短距離走はバカである。

 だからこそ、素直に魅力を感じてくれているのだと思った。


 短距離走はバカである。

 だからこそ、ちゃんと説明をわかって貰えていたのかと嬉しくなる。


 パイは嬉しそうに、本当に嬉しそうに笑う。


「たった二票が、こんなに嬉しいなんてね」


 数学と書かれた二枚の紙を抱き締めて、パイは瞳を潤ませていた。

 あまりの喜びように、墾田ちゃんも短距離走もとても嬉しくなった。


「ありがとう。皆にも好きになって貰えるように、頑張らないとだね」


 パイはそう言って微笑んだ。

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