えーご
「み、ミーは! えっと、英語の授業を始めたいと思います」
自然な会話は出来るようになったミスターだが、やはり前で話すと言うのは苦手らしい。
彼はキャラクターに成り切ることが出来ず、どうしてもたまに崩れてしまう。
完璧に演じられるほど、彼は弱ってもいないし強くもなかった。
「英語の授業とか超どうでもいい。マジ何やるかわからないし」
ここで褒めても逆効果と判断し、色彩はわざとそう言った。
しかし彼女にその口調は向いていなく、棒読みを究めてしまっている。
それを聞いてミスターは少し笑う。
頬を緩められたので、色彩の目的は達成出来たと言えるだろう。
「どうでもいいなんて、言わないで下さい。その、ミーが英語の楽しさを伝えてみせます」
緊張が多少解けたのか、裏返った声ではなくなった。
それでもまだ、緊張はしている様子。
そんな姿を、微笑ましく見守っている。
ただ、その割にはしっかりとした授業である。
学校と言うよりは、塾と言った感じであった。
魅力を伝えることは今回の目的でないのだが、ミスターが楽しそうなので誰も止めはしなかった。
それにより、英語の基本は確実に理解も出来たから。
英語を好きになって貰いたい。そんな思いが現れた授業だった。
「やっぱり、英語は最高だね」
微笑んだ色彩の声で、英語の授業は幕を閉じる。