しゃかい
「しょうがないから、今回は歴史から離れるわよ。仮にもあたしは社会代表な訳だし」
墾田ちゃんが授業をしようと考えていたのは、政治経済であった。
勿論彼女自身は嫌いでないのだが、中々楽しさを理解して貰うことが出来なかった。
だから彼女は、楽しみを求めていないというこの機会に説明をしようと思ったのである。
たとえ楽しさを伝えられないとしても、理解はして欲しいと願っていたから。
「かあさんと同じように、あたしも擬人化して本にしてみたの。子供向けと大人向けを作ったから、好きな方を読むといいわ。特別版も一応あるわよ」
そう言って、墾田ちゃんは三冊の本を置いた。
子供向け。彼女がそう言った本は、絵本のような作りになっていた。
しかし詳しく知るにはあまり向かない。用意はしたが、これを読んで理解したなどと言えば彼女に笑われるだろう。
大人向け。そう言われた本は、辞書のように分厚い本であった。
墾田ちゃんが何か手を加えた訳でもない。市販のものであり、彼女の言う擬人化などされていない。詳しく知りたいならば、これを読めばいいだろう。
お世辞にもわかり易いとは言えないものだが……。
そして特別版。それは漫画のように描かれた薄い本である。
完全に作者、つまり墾田ちゃんの趣味が丸出しになっている。ある意味大人向けよりも子供には向かないけれど、簡単に上手く纏めてくれているのは確かであった。
子供向けは、色彩とシャープで読んでいた。
大人向けは、倒置とかあさんで読んでいた。
特別版は、パイが読みながらも赤面していた。
その他は、その分野自体に、下手したらその教科自体に興味を示していない様子。
そんな態度に多少の苛立ちは覚えたものの、笑顔で墾田ちゃんは授業を開始した。
人に説明するのが得意でないと本人は言うが、かなり説明上手であっただろう。
話を聞く全員に多くの情報を与え、正しく理解させたことだろう。
それはこうも思わせるほどであった。
勝者が決まった。