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すーがく

「どうも。パイは、数学の授業を行うです」


 変わった口調で登場し、パイは優しく笑った。


 彼は天才ぶりを発揮してくれた。


 同じレベルの問題をやれば、必ず合わない人が出てしまう。

 上に合わせてしまえば、下は何も出来ない。しかし下に合わせることにより、上なのに合ったレベルで出来ないのは可哀想。そんなの可笑しい。


 そう考えて、二種類の授業を同時に行った。


 バカコース。ちょっと出来るからって調子に乗っている人の為のコース。

 名前はバカにしているが、これが彼の優しさなのであった。


 倒置、かあさん、シャープ、かんな、短距離走。

 この五人はバカコースへ行った。


 墾田ちゃん、ミスター、色彩。

 残りのこの三人はちょっと出来るからって調子に乗っている人の為のコースにいる。


 二つの授業を行うと決めていたので、パイはホワイトボードを持参していた。


 バカは文字が読めないと考え、口頭で説明。

 調子に乗っている人の自信を殺ぎ落とそうと考え、解説を書くと問題を書き始める。


 途中でかあさんは自分がこのレベルに合っていないと気付く。


 しかしホワイトボードに書かれた問題は、全く手も付けられないものばかり。

 私のような半端物の行き場はないのだと頭を抱えてしまう。


「どうしたの? かあさん、わからなかったかな。それだったらもう一回説明するけど」


 自らバカを名乗る人なので、かなり低レベルな説明をしてあげていた。


 優しいと言うよりは、バカにしているとしか思えない授業である。

 基礎からと言い出して、足し算の説明なんて始めているくらいなのだから。


「いいえ。それよりも、あちらに行って差し上げてはどうです? 悩んでいらっしゃるご様子ですよ」


 かあさんの指摘に、パイは笑顔で返した。

 そして仕方がないので、バカコースに付きながらもホワイトボードの説明を書き足して行く。


「出来たわ。これでどうかしら」


 説明は加えられていき、遂に解けるまでに至った。


 自信を持って墾田ちゃんはパイに提出する。

 それを舌打ちで受け取ると、容赦なくバツを付けた。


「なんでよっ!」


 彼女の叫びも無視して、パイはバカへの説明をしている。


 しかし彼もそこまでの鬼ではない。

 一応、今日は講師と言う設定なのだから。


 変わらず説明をしながらだが、問題のヒントをしっかり書いてあげた。


「これで、どこが間違えているかわかったよね? もう少しだから、頑張ってね」


 一旦説明の口を止め、耳元でそう囁く。

 それに少しきゅんとしながらも、墾田ちゃんは一礼。


 自分の席に戻っていった。


 そして、用意された問題は無事全員が解き終えることが出来た。


 苦戦をしたのは短距離走とミスター。


 短距離走は、説明を聞かないのでわかる筈もなかった。

 しかし優しく易しく説明し、パイは短距離走にすら理解させた。


 出来ると勘違いしていたけれど、ミスターにはレベルが高かった。

 全員が片付いたので、ミスター一人にパイは丁寧な説明。

 説明をしっかり受ければ、ミスターはちゃんとわかる。だってバカではないのだから。


「それでは、今日の授業を終わりにします。ありがとうございました」


 可愛らしく、珍しく、無邪気な笑顔をパイは浮かべた。


 優勝に架けるそれぞれの想いを乗せて。

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