こくご
「学びませんか? 担当しない教科も」
微笑みながら倒置はそんな提案をした。
終わりが近付いてしまうのが嫌で、恐ろしくて。
あれほどまでに恐れていた場所だったのに、それに驚きわからず、頭を抱え。
わからないから、倒置はこんな提案をしたのである。
彼の想いは共通するものなので、勉強会を始めることになる。
「自分の教科を学ぶ訳でもないし、魅力を伝えようとするとかでもないわ。教え合うのよ? そこは間違えないで欲しいわ」
自分の教科の魅力を伝えるチャンス、墾田ちゃんはそう思った。
だからこそ、自分にも言うように注意した。
それに頷いて、天才たちの勉強会は始まる。
得意としない教科。それでも天才は、才能を持っていた。
「これじゃ勉強にならないよね? もっと担当教科と遠く離れた教科にしないと」
理科や英語を学びながら、パイはそう言った。
彼にとって、その二教科は簡単過ぎたからである。
似ている教科をやれば、楽しく出来るだろう。
そう思い、グループ分けは行われた。
しかしそれでは新しいものを学べないと、グループは決め直すことにした。
「授業にすれば? 皆でやれる」
どのように分けるのがいいかわからず戸惑っていた。
勉強が出来るだけに、頭は柔らかいとは言えなかったのだ。
その様子を見て、色彩はそう言った。
無論、その意見は通り授業制とされた。
「墾田永年私財法様が簡単となってしまいますか? 古典を学んで戴こうと思っていたのですが」
突然授業となり、八人を前に少し緊張の表情を見せる倒置。
それをなんとか隠し、倒置は自然な笑顔で墾田ちゃんに問い掛けた。
彼女はふるふると首を横に振った。
それが何に対する否定かわからず、倒置は首を傾げる。
だから仕方なくと言う風に、墾田ちゃんは説明を入れた。
「心配する必要はないわ。あたし、現代語訳しか読まないから。あんま期待されるようなこと言わないで? わかんないもん」
歴史が大好きな墾田ちゃんだが、言葉が好きな訳ではない。
説明するのを嫌がり小声としたのは、わからないと他に知られたくなかったからだ。
「左様にございましたか。失礼致しました」
一言墾田ちゃんに謝ると、倒置は教師のような授業をした。
人前を苦手とする彼だけど、ベテラン教師のような。
もうここには、最初のピリピリした雰囲気はないのだから。