しゃかい ~ミスターエックス、出来ますっ!~
「このあたしが作った、最高のテストを受けてみなさい。幼稚園生でも出来ると思うわ」
多少趣味は入っているものの、確かに墾田ちゃんは簡単な問題を用意していた。
中三までの知識があれば、確実に百点は狙える。
少なくとも小六ほどの知識があれば、高得点も余裕だろう。
その程度の簡単な問題を用意してくれていた。
だから、皆の出来も比較的よかった。
問題の難易度が低かった。勿論それもある。
しかしもう一つ、墾田ちゃんの問題の出し方が上手かったのだ。
彼女は自信があるだけではない。
しっかりそれなりの知識と技術を持っていた。
自称天才ではなく、努力家で秀才だったのだ。
「確かに簡単でした。他の教科もこれくらいの難易度でよかたと思いマス」
嬉しそうな表情を顔に出さないようにしながらも、ミスターは笑顔だった。
彼が成績トップ、十問中九問正解の九十点だ。
「何さこれ。誰がバカだよ誰がっ! うぅ」
そのとき、何かを発見したパイが叫んだ。
皆は不思議そうにパイを見る。
その中、墾田ちゃんだけは楽しそうに笑っていた。
「特別にあたしがメッセージ書いてあげたの。喜んだらどう? それに、自分の点数考えてみなよ。こんな簡単なテストでその点数とか、助からないよ結構」
パイのテストだけ、端に墾田ちゃんからメッセージが書かれていたのだ。
十問中三問正解で三十点。
確かにこの点数はかなり酷い。
助からないような点数である。
だから墾田ちゃんは、挑発の意も込めて書いておいたのだ。
『やっぱりバカだね』
と。たったその一言だけ。
それは、十分挑発としての意味を果たしてくれた。
本当だったら、賢いパイがそんな挑発に乗る筈がない。
しかし、墾田ちゃんの言葉だったからかその挑発に乗った。
素直なパイは、素直に怒ったのであった。
二人の言い合いを止めたくて、止められなくて。
だからミスターは、言うことが決まっていないくせに思い付きで叫んだ。
「ミスターエックス、出来ますっ!」
四教科目、社会の勝者が決まった。