149/189
おんがく
いつも笑顔な、明るくて優しい少女がいた。
少女は綺麗な歌声で、世界中に愛を届けていた。
天使とまで呼ばれた、愛に溢れる少女だった。
しかし少女は、まだ愛とは何かを知らなかった。
いつも笑顔な、明るくて優しい少女がいた。
少女は笑顔を振り撒き、世界中に愛を届けていた。
女神とまで呼ばれた、愛に溢れる少女だった。
だから少女は、もう愛とは何か忘れてしまっていた。
少女の笑顔は、少女の顔に貼られた仮面でしかない。
それに少女は気付いていたが、気付かせなかった。
自分も気付かない振りをして、自然な笑顔を振り撒いてきた。
いつも泣いている、明るくて優しい少女がいた。
少女は必死の笑顔で、愛しい少年に愛を届けようとした。
世界中に振り撒いていた、笑顔の仮面はもうなかった。
つまり少女は、愛とは何か知ることが出来たのである。