えーご
少年は、かなり恵まれた環境に産まれた。
人々からは羨まれる存在、の筈だった。
少年は、賢さを持っていた。
しかし持ち過ぎるがゆえ、他人と共感したり学び合ったり出来なかった。
少年は、美貌を持っていた。
しかし持ち過ぎるがゆえ、集まるのは”友”ではなく”ファン”や”妬みの言葉”であった。
少年は、かなり恵まれた環境に産まれた。
それは少年を鎖で縛り付けてしまう。
少年は、賢さを持っていた。
だからそれが嫌で、学びはせず遊びに没頭した。
少年は、美貌を持っていた。
だからそれが嫌で、普段は顔を隠し、出すとしても変装を続けた。
期待の声に応えられる力は持っていた。
それでも少年は、その声が大嫌いだった。それから逃げ出そうと、全てを振り払い、負け組としての人生を見ようと望んだ。
それでも少年に、その気持ちなんてわからなかった。繊細な心を持つ少年だからこそ、平凡さは求めても近付くことすら出来なかった。
少年は、かなり恵まれた環境に産まれた。
それを一人の少女は憐れんだ。
少年は、賢さを持っていた。
しかしその上もいるのだと、教えてくれる大切な場所。
少年は、美貌を持っていた。
しかしその上もいるのだと、教えてくれる素敵な少女。
自分が嫌いだった少年は、その理由を悟った。
いつしか、自分を最も優れたものと、思い込んでしまっていたからだろう。