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すーがく
少年は全てを知っていた。
全てを知り、全てを知らなかった。
少年は世界を知り尽くしていた。
そして、感情とは何かを忘れてしまった。
少年は何かを求めていた。
何かを求め、何かから逃げていた。
少年は何もかもを持っていた。
だから、物の魅力も感じなくなってしまった。
高い知能を持ち過ぎて、理解をすることも面倒になり。
学ばなくとも全てを知り、新しく学ぶのも面倒に。
そんな少年は、一人の少女と出会った。
その出会いで、少年は知らないことを知る。
少年は何もいらなかった。
少女の隣にいられるならば、何もいらないと思えた。
手に入れた物を全て投げ出して、少女を守る。
感情を教えてくれた、たった一人の人だから。
そして、少年は人間となった。