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こくご
少年は泣いていた。
悲しい訳ではない。嬉しい訳でもない。
しかし少年は、泣いていた。
涙が溢れる理由は、少年にもわからなかった。
ただ、涙を止めることは出来なくて。
少年は一人、涙を流していた。
少年は笑っていた。
楽しい訳ではない。嬉しい訳でもない。
しかし少年は、笑っていた。
なぜ笑っているのか、少年にもわからなかった。
ただ、笑顔を向けないといけないと感じて。
少年は一人、笑顔を浮かべていた。
気付いて欲しかったんだ。
自分の存在を、認めて欲しかったんだ。
少年は褒めて貰いたいだけ。
自分のことを想って欲しいだけ。
少年は微笑んでいた。
ちょっぴり悲しくて、でも嬉しくて、楽しくて、嬉しくて。
複雑な感情を抱え、少年は微笑んでいた。
なぜ微笑んでいるのか、少年はもう知っている。
ただ、幸せだからだ。
少年は大好きな人の隣、微笑んでいた。




