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ほけんたいく ~勝利の為~
「お前ら、もっと熱くなれよ!」
突然の叫び声に、皆は驚いてしまう。
「勝負なんだから、勝利を目指して当ったり前ぇだろ!」
そんな短距離走に、少女は苛立ちを覚えた。
だから咄嗟に反論する。
「争う必要なんてないじゃない。素直な気持ちを尊重し、相手の方が美しいと感じれば負けを認める。それだって立派な強さだと思う」
勝利を目指せ。
その言葉には、自分のやり方を否定された気がした。
だからシャープは反論したのである。
「つまりそれは貴男の想いでいいのよね? 今日はもう終わりでいいかな」
シャープは正直短距離走が好きでなかった。
”美しくない”からだ。
彼の番が訪れると、その日はすぐに終わりへと導こうとする。
そして今まで、誰もそんなこと気にしなかった。
合わない。そう思うところがあったからだ。
シャープの行為にありがたいとすら感じている人もいただろう。
しかしそれに、短距離走自身は気付いていなかった。
強制終了されていることすら、気付いていなかった。
何を感じることもなく、笑顔で宣言した。
「最後の勝者はオレで決まりだな」