りか ~パイと色彩、代表教科以外も出来るよ~
「数学色が強くならないように、計算問題は減らさせて頂きます」
かあさんの一言目からして、パイはショックを受けていた。
計算があるから理科は出来る。
そう思って、トップを狙っていたからだ。
パイは自分が数学以外では秀でていないと思っている。
だからこそ、まだましな理科でと思っていたのだ。
「多分簡単だと思いますよ」
かあさんが用意した問題は、小学校から中学校で習う程度の簡単なものだった。
彼女はこれは簡単にし過ぎた、そうも思っていた。
しかし数学の悲劇の後なので、そのままの問題で出したのだ。
「それぞれ理科の中でも得意と不得意があったようですね」
様々な”理科の問題”を入れたので、一部出来るが他は出来ない。
そんな事態が大量発生していた。
他の教科としてきている人達なので、理科を完璧に出来る筈がなかった。
だから、全体的にいいと言う人は少なかったのだ。
「全体でしたら、一位は二名いらっしゃいます。パイさんと色彩さんですね」
呼ばれた二人は驚いた。
かあさんは自分で発表したかった為、順位を書いてはいなかったのだ。
そして二人の点数は、十問中七問正解の七十点。
二人とも低いとは思わなかった。
しかし、一位だとも思わなかったのだ。
なぜなら、一部が完璧で他は所々。一部滅茶苦茶。
二人揃ってそんな点数の取り方をしていたからだ。
「物理は百点でしたね? さすがです」
パイにそう言うと、かあさんは優しく微笑んだ。
それが嬉しくて、パイは素直にそれを表情に出していた。
何度も言うが、彼は素直な子なのである。
「生物が百点でした。植物のこと、よくご存じなのですね」
次は色彩のところに行き、かあさんは再び優しく微笑んだ。
色彩も、それを素直に喜んでいた。
しかし彼女は全く表情に出さなかった。
感情表現の仕方を知らないのだ。
「スケッチの前に、よく調べるから」
笑顔を作れない色彩にとって、かあさんの笑顔は眩しくて仕方なかった。
眩しくて見つめられなくて……。
視線を逸らして色鉛筆を握る手に力を込めていた。
「そうなのですか? さすが、真面目で素晴らしいと思います」
かあさんの大人な対応に、色彩は何も言えないでいた。
「えと、色彩ちゃん? 纏めるとしようか」
人見知りなパイは、一生懸命色彩に言った。
かなり話し掛け辛いタイプではあったのだが、自分が言わなきゃ進めないと感じたからだ。
同点一位なのだから、二人で言わざるを得ない。
他人との交流の少ない二人は、共にそれが出来かねていた。
しかし、勇気を出してパイは頑張った。
「なんて言おっか」
二人が出来た分野は異なっている。
たまたま同じ点数だったと言うだけなのだ。
「代表教科以外も出来る。纏めてこれでどう? じゃ、せーの」
パイが困った様子を見て、色彩も勇気を出して言う。
いい案が思い付いてもいなかったので、パイもそれに従うことにする。
「「パイと色彩、代表教科以外も出来るよ」」
三教科目、理科の勝者が決まった?