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あなたはどのきょーかがすき?  作者: ひなた
しょーりのおもい
136/189

すーがく ~勝利の為~

「倒置くんが聞いてくれたし、僕も答えた方がいいんだよね。なぜ優勝したいのか」


 パイとしては答えたくない質問ものでもない。


 だからパイはそれを続けようと考えた。

 それぞれの想いを知りたい、彼は素直にそうも思っていたから。


「け、結構です。それだと、私の醜さを晒さなければいけなくなってしまうではありませんか」


 このままでは自分の番も訪れてしまう。

 それを防ぐ為には、パイに続けさせてはいけない。


 止める手段がわからず、それでもかあさんは必死に止めた。


 その行動もしてはいけないもの。

 彼女はそれにも気付いていた。


 だけど、これ以上いい手段が見つからなくて。

 急がないと、パイは答えてしまうので止めないといけなくて。


「素晴らしい企画を台無しにするようなこと言ってごめんなさい。でも、なんて答えればいいかわからなくて。ごめんなさい、演じ切れなくてごめんなさい。理科の名を守れなくてごめんなさい」


 恐怖に駆られ、かあさんは混乱状態であった。

 そして落ち着かせることなど、誰にも出来なかった。


 かあさん自身が、近付くことを許さなかったから。


「あのっ! あの、う……ごめんなさい」


 落ち着かせてあげられたら。

 そう思い、少年は叫ぶ。


 叫ぶけれど勇気が足りなくて。

 謝ってしまい、自分を守る為に玉結びとなってしまう。


 自分を守る為に、かあさんを守ることは諦めてしまう。


「謝らなくていいんだよ! オレがお前のことは守るっつっただろっ!? パイ、続けてくれ」


 どうしていいかわからず、短距離走は怒鳴るように言ってしまう。

 かあさんを怯えさせながらも、怒鳴るように言ってしまう。


 落ち着かせるよう背中を摩り、パイに続けさせるよう促した。


 そうしなければ、かあさんはまた乱してしまうから。

 パイの話の途中では、絶対かあさんは乱さない。人の話を打ち消すようなことは、どんなに精神状態が不安定でもしない。


 それがわかっていた。


 彼女は怯え、その力には長けるようなってしまったから。


「数学って、子供が嫌うイメージあるでしょ? だからさ、数学の楽しさを伝えたいと思うんだ。優勝に拘るつもりはないけれど、優勝した方が。って思うのよそれだけ」


 喋り辛い。そう言うように、短距離走の姿を見る。


 しかし想いを無駄にしない為、パイは自然を装った。

 生まれながらの天才は、幼いころからそんな気遣いをしてきたから。


 その点はかあさんと似ているとも言えるパイ。


 だから重ねていたのかもしれない。

 二人ともお互いに……。


「最後の勝者は僕だね」

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