こくご ~勝利の為~
「なぜ優勝したいのでしょうか、皆様は」
ふと、倒置がそんなことを問い掛けた。
そのようなことを問い掛けるのは、彼らしくない。
自分の思いを語りたがらない倒置。だから、他人の思いを聞くことも少なかった。
勝負に関係のないことは出来る限り話したくない。と言った感じであったのだ。
そんな彼から問い掛けるので、シャープは少し驚いてしまう。
「対戦相手を応援したくなっただけです」
どうしたの? そう問われるのが嫌だから、その前に倒置はそう言っておいた。
その言い方はいつもシャープに向けるような、ツンとしたもの。
だからその言葉が本当であるとシャープは判断。
彼の提案を繋げることにする。
「そう言う倒置様は? 優勝への想い、語って欲しいな」
提案者は初めに語る。
それを礼儀と考え、シャープは話し易いようにする。
そして彼にしかわからぬよう、メッセージを送る。
”悲しまないで。貴方は倒置でいればいい”
「決まっているではありませんか。国語と言う教科を背負っている以上、負けられませんから」
一瞬、シャープによる嫌がらせかとも思った。
しかしメッセージを見て、彼女の行動はやはり優しさであったと悟る。
本当のことなど語る必要はない。
国語代表として言えばいい。そんな意味を込めた、優しい言葉。
「やっぱりそれはありますよね」
技術家庭科を代表する少年。
かんなも玉結びも演じていない、皆の前での発言を苦手とする少年。
そんな彼も、盛り上げる為に同意するような言葉を発した。
折角、愛しい彼が提案をしてくれたんだ。
それを無駄にする訳にはいかない。
同じ思いの下、二人は努力した。
その後の話でも、二人は彼の為に努力した。
その努力に気付いているから、倒置は気付かない振りをする。
そして、自信を持って宣言した。
「ぼくですから、最後の勝者は」