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あなたはどのきょーかがすき?  作者: ひなた
短距離走 たいくさい
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おんがく

「これは、どうすればいいのだろう」


 部屋の中心に置かれたものを見て、シャープは反応に困る。


「玉入れの延長戦かな? 昨日、楽しそうだったし」


 どうしていいかわからないから、そんなことを言ってみたりする。


 そんな筈はない。

 身長ほどの高さがある、大きな球体なのだから。


 それを何に使うかは、大体察していた。


 だからこそシャープは、なんとかぼけられないかと悩んだ。

 周りの皆が疲れ気味なので、なんとか笑わせられないかと悩んだ。


「面白そう。それで玉入れ」


 ボケを考えて呟いたシャープの言葉。

 それなのに、色彩は真面目な顔そのもので言って来る。


 彼女は本気だった。


 しかし、面白そうと言うのは少し違った。

 悪戦苦闘しながらもそれに挑戦する、ミスターの姿を見たかっただけなのだから。


 正直、彼女自身は参加する気もさらさらない。

 ミスターが頑張るのを見られるから、そうでなければ企画を全力批判していただろう。


「大玉転がしと行こうか!」


 叫びながら、短距離走は現れる。


 その叫びに対し、シャープはクレーム。

 だって気に入らないものだったから。


 叫び声も言葉も競技も、短距離走も。

 気に入らないものだったから。


「つまらない。これだけのものを用意したなら、一回ぼけるのが普通でしょ? 自分で用意したくせ、ギャグの一つも用意していなかったの? 信じられない」


 最早シャープは、正確の悪い上司のようになっていた。

 扱いに困り、短距離走ですら悩む。


 あの短距離走を悩ませたのだ。


「大玉転がしって、どこでやるの? そんな危険競技持ち出して、うちの倒置が怪我でもしたらどうするのよ」


 言い続けるうちに、シャープは過保護な迷惑お母さんになっている。


 シャープによる嫌われ者。

 そんなのに詰め寄られ、短距離走は困ってしまう。


 そのとき、シャープは尻餅をついてしまう。


「気持ち悪いからやめて下さい、うちのなんて。バカにしているんですか? バカにしているのでしょうか」


 華麗なる倒置の技により、気付かれることなく足を掛けた。

 訳ではなく、全身に力が入らないようにしてやった。


 その方法は企業秘密だそう。


「お母さんは貴方のことを心配して」

「五月蝿い。余計なことすんなよ」


 そんな感じで、シャープと倒置は茶番を始めてしまう。


「まあまあ、お母さんも落ち着いて下さい。安全面は問題ありませんから、お子さんを頑張らせてあげることは出来ませんか? これもお子さんの為です」


 先生役なのか、短距離走もその二人に入って行く。

 三人以外誰も着いて行けない、そう思われた。


「きみがうちの子の何を知っている。お子さんの為とか言わないで貰いたい」


 ミスターを抱くようにして、色彩が短距離走に言う。

 そうされてしまっては、参加したくなくてもミスターだって強制参加。


 どんどん巻き込んで行って、結局八人で茶番を楽しむ。


 しかし、技術家庭科代表の少年は動こうとしない。

 かんなでも玉結びでもない以上、皆の仲間でない気がして。入って行く勇気が出せなかった。


 だからキャラを保持し、微笑ましく見守ると言う道を選んだ。


 一人輪の外で、楽しそうにする天才たちを眺める。

 そして少し呆れたように、微笑みながら呟くのである。


「これが運動の力なんですかぁ?」

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