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あなたはどのきょーかがすき?  作者: ひなた
ゆーしゅーなひとはなんでもできる
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すーがく ~過酸化水素水、計算も出来ますよ~

「次は僕でいいよね。皆百点取れて比べられないかもしれないけど、特別に滅茶苦茶簡単なものにするよ。計算問題でいいよね? それなら出来るだろうし」


 パイが優しく微笑んでいるので、誰も疑いはしなかった。

 そしてパイ自身も、騙すつもりはなかった。


 だって彼の言葉は嘘じゃなかったから。


 計算問題ではある。

 ただ、大学入試級の難問ばかりだったと言うだけで。


 それが彼にとっては滅茶苦茶簡単だったのだ。


 その言葉に嘘はないので、もうこれ以上難易度が下がることはない。


 その上パイは、”バカ”の存在を知らなかった。

 エリートに囲まれて育っているので、自分のことも普通より少し出来るくらい。

 その程度にしか思っていないのだ。


 ”バカ”の存在を知っているかどうか、それがパイと倒置の大きな差であった。


「全然簡単じゃありませんでした。難しかったですよ」


 不満気にそう言うかあさんが、成績トップである。


 十問中六問正解、六十点だ。

 これほどまでに低い点数を目にしない為、かあさんは最下位だと思った。

 そして教科が理科以外では自信があった数学だったので、素直に凹んでいた。


 しかし順位を確認し、驚き喜びそうになる。でも喜びはせず、点数に凹んでいた。


「そうかな。でもかあさんがそう言うんだったらそうなんだろうね」


 本人は素直なので、パイはかあさんの言葉に納得する。


 その姿が、とても気に入らない少女がいた。

 墾田永年私財法である。


 彼女が言ったところで、そう簡単に納得して貰えるとは思えなかった。

 だから、かあさんの言葉で簡単に納得するパイの姿が気に入らなかった。


「やっぱり文系だから出来ただけなんだね? 計算は滅茶苦茶だったじゃん」


 恨めしそうにしている墾田ちゃんを見つけ、パイはからかうようにそう言った。


「滅茶苦茶じゃないもん。それに、他の人も低いんだからあたしは低くないんじゃない? 問題が悪い」


 そうは言うが、墾田ちゃんの場合順位も低かった。


 一問正解で十点。

 他の人が低くても、五位なので墾田ちゃんは低い。


「そう言うなら、ここで点数発表してあげてもいいけど?」


 楽しそうにパイは墾田ちゃんに言った。


 だから墾田ちゃんはテストの点数が見えないように抱き抱え必死に隠す。

 しかし、採点しているのだからパイが点数を知らない筈がない。


「冗談だよ。このあとの社会で怖いから、それはやめとくね」


 テストを隠す墾田ちゃんを眺めながら、パイはそう言った。


 パイはプライドが低くはない。

 そして社会は苦手な為、ろくな点数を取れないこともわかっている。


 少なくともパイは、恥をかくような真似はしたくないのだ。


 それにパイは賢かった。だから、冗談と笑うことができた。


 先のことも考えられるし、自分の実力もわかっている。

 感情で動くことだってない。


 彼が賢かったから、墾田ちゃんは公開処刑されずに済んだ。


「喧嘩以外は出来ないのぉぉお♩」


 二人が言い合いをしていると、シャープの大きな歌声が止めた。


 言い合いをしたって、シャープの歌で声はどうせ聞えない。

 それに、急に大きな音が聞えたら黙ってそちらを向いてしまう。


「今回の主役は君らじゃないでしょぉお♫」


 その声で、二人は我に返った。


 自分が優秀と証明した回ではない。

 ならここで言い合いをして目立っても、それは互いに恥ではないかと。


「主役は私です」


 他に誰も騒がないように、かあさんはきっぱりと言った。


「過酸化水素水、計算も出来ますよ」


 二教科目、数学の勝者が決まった。

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