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あなたはどのきょーかがすき?  作者: ひなた
短距離走 たいくさい
126/189

すーがく

「なるほどね」


 何を言わなくても、今日やる種目は一瞬で理解出来た。


「今日は、綱引きを出来るんだぜ! いぇえい!」


 楽しそうな声を上げ、一人で短距離走は盛り上がっていた。


 部屋には、太い綱が設置されていた。

 室内と言うこともあり、一応綺麗なものを用意はして貰っている。


「チーム分け? んじゃ、五教科と四教科って分け方よくするよな。それでよくね?」


 普通に考えれば、五教科代表の方が体力や力は弱いであろう。

 しかし、雑に思われたチーム分けは結構力が均等になるのだ。


 なぜなら、五教科は五人いるのだから。


 いくら短距離走が入るとはいえ、人数が一人多い。

 反論するのが面倒というのも理由だが、誰もそのチーム分けに文句は言わなかった。


「よーい、どん!」


 元気な短距離走の合図で、一斉に綱を引き出す。


 始まる前の時点では、接戦が繰り広げられると皆思っていた。


 実際は、接戦になんてならなかったのだけれど。


 人数が違う。そんなものは関係ない。

 むしろ、人数は違わなかった。


 倒置は綱を持つことすら出来ずにいるから論外。

 始まった途端に倒れてしまった、パイとかあさんだって論外。


 そうしたら、墾田ちゃんとミスターしか残らないのだ。


 四教科チームだって、全員が戦える訳ではない。


 意外とやる気はあったものの、色彩だって開始と同時の転倒。

 キャラクターを演じていない技術家庭科代表の少年。彼も力なんて出せなかった。


 結局、短距離走とシャープしか残っていないようなものである。


 ミスターだって力がある訳ではない。

 そんなの、結果が見えていた。


 粘りはするけれど、墾田ちゃんも女の子。


「弱いな。んなんじゃ勝負にならないぜ。すまね、オレは審判なんだった」


 勝負を楽しみたかった。

 自分が参加しなくてもいいから、勝負を楽しみたかった。


 だから短距離走は、体育代表として審判に回った。


 それでも結果は同じ。

 接戦にはなった。でも、短距離走が望むものではない。


 五対三の綱引きの筈。


 だけど墾田ちゃんとシャープの勝負になってしまう。


「皆ちゃんとやれよ! ふざけてんのか」


 手を抜いているのだと思い、短距離走は怒り出す。


 だって彼は”天才”であったから。

 だって彼は”バカ”であったから。


 なぜ出来ないのかなんて、わからないのだ。

 その程度が出来ないだなんて、信じられないのだ。


「僕だって、簡単な問題も解けなかったお前に腹が立った。でもお前なりに頑張っているんだと思ったから、応援したんだよ。その言い方じゃ、お前はふざけて取り組んでいたようだな!」


 短距離走の言葉に腹が立ち、珍しくパイは叫んだ。

 冷静ではあるけれど、彼はとても素直な人だったから。


 それに、皆の嫌がる顔を見たくないと思ったから。


「そうだ。今でも簡単なプリントは持っているよ? 各教科を代表する僕らに体育への参加を強要しているんだから、君は数学でもやって待ってな。出来ないなんて言わせない。それは僕にとって簡単なもの、つまり出来ないのはふざけているってことなんだから」


 言葉で言っても理解出来ていないようだったので、パイは手持ちのプリントを渡した。


 そして笑顔を取り戻すと、皆の輪に戻った。


 怒鳴ろうとする短距離走を見て、倒置は冷淡に嘲笑うように言った。


「これが運動の力ですか」

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