こくご
「なんでしょう、これは」
落ちていた紙を拾う倒置。
そして彼は、そこに書かれていた文字に恐怖する。
『大体育祭開催! 九日間に渡り、最高の体育祭を楽しもう。九つの種目を楽しめるなんて、感激だよな』
どう考えても、犯人は短距離走であった。
「いきなり走らせはしない。皆、楽しみは盛り上がってきた頃がいいだろ? ってな訳だ。まずダンスと行こうぜ」
眩し過ぎる笑顔で、短距離走は叫ぶ。
嫌がる皆をヤル気にさせるほどの笑顔で。
屈託のない、心から楽しもうとしているような素直な笑顔で。
「ダンスなら出来ると思うよぉぉお♫」
それは音楽の範疇だ。とでも言わんばかりに、シャープは叫ぶほどの声量で美しい歌声を届けた。
そして得意のダンスを披露し出す。
しかしシャープが躍るダンスは、短距離走がやって貰いたいダンスとは違った。
優雅で美しくて、かなり上品なダンス。
汗掻いて炎天下の下踊るダンスではない。
激しく踊るようなものではない。
短距離走の求めるカッコ良さではなかった。
美しい、美しい踊りである。
「ぼくも出来ると思います、踊りでしたら」
シャープのダンスを見て、倒置も踊り出す。
彼のものは、踊りと言うよりも舞いと言った方が正しいようなもの。
これも勿論短距離走の求めているダンスとは違う。
優雅で美しいものであった。
「ダンスを踊ればいいの? なら簡単じゃない」
墾田ちゃんの言葉で、皆思い思いに得意の踊りを披露する。
かあさんは短距離走が求めているような、激しい踊りを。
墾田ちゃんは、倒置の隣で美しく舞いを。
ミスターは舞踏会の経験を活かしてシャープと共に踊りを。
色彩はただ不思議な動きを。
かんながラッパーのようなダンスとも言えない動きを。
そして、提案者の短距離走が着いて行けなくなっていた。
何も出来ず、パイはただ立ち尽くしていた。
「踊り、教えてやるよ」
ニッと笑い、短距離走はパイの特訓に入る。
彼の一生懸命さは伝わったから、パイはそれに付き合ってあげることにする。
ない体力で、短距離走の言う通りに力の限り踊る。
出来るようになる訳ではないパイだけれど、一生懸命なのは伝わった。
普段ならなぜできないのかとイラつく短距離走。
でもパイが頑張っているので、一生懸命教えた。
結局パイのスキルは殆んど変わらなかったが、二人で一生懸命練習出来た。
数学代表と保健体育代表。
中々共になることのない二人で。
「これが運動の力だぜ」