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あなたはどのきょーかがすき?  作者: ひなた
倒置 えんぎ
120/189

えーご

「マジお前ら誰? この俺様の前に出て来るとか、クソ生意気なんだけど」


 驚くことに、そう言い出したのはミスターである。


 演技力が高いとは残念ながら言い難い。

 けれど、彼の頑張りは確かであった。それが全員に伝わっていることも確かなことであろう。


「神よ、神。神様に向かってんなこと言って、ただで済むと思わないでよね」


 自信満々で言う墾田ちゃんに、ミスターは精一杯の蔑む顔を向けた。


「笑わせないで欲しいな。神などと言って、恥ずかしくはないのか。超ウケるんだけど」


 放っておいてもキャラ崩壊していきそうな状態であった。


 それでも早く崩したいと、墾田ちゃんは攻める。

 勝利する為ではなく、敗北させる為。


 それは恐れずに戦うことが出来、墾田ちゃんに向いた戦いである。


「そんなものも信じられなくなって、可哀想に。正真正銘神よ、全てを思いのままに出来る素晴らしい存在」


 偉そうに言うけれど、ミスターは半信半疑の様子。


 今までの演技はお世辞にも上手とは言えなかった。

 それなのに、その表情だけは天才的な演技であった。


「病院行く? 良かったら、この俺様が救急車を呼んだるけど」


 自由なミスターの言葉に、墾田ちゃんはやっと気付く。


 ミスターには前回までの設定を守る気がないんだ、と。

 彼は無駄なプライドなど持ち合わせておらず、勝利の為に戦っていた。


 それと、前回までにほぼ参加していないのと天然であることも原因の一つ。


 同じ設定であったことにすら、彼は気付いていなかったのだ。

 気が合うんだろうな、としか思っていなかったのである。


「我は神、人間なんぞの手によって、大きな傷は癒されたりせぬ」


 ミスターの表情に恐怖を覚え始め、墾田ちゃんは行動する。

 新しい設定を付け足して行き道を戻そう、そう考えたのだ。


「神も大きな傷をお持ちなのでしたら、僕と一緒に消えてはみませんか? 僕は死へと逃げられませんが、神を救えば僕は罪を十分に償ったと言える筈です」


 ずっと黙っていたが、墾田ちゃんが圧され気味なので倒置が動き出した。

 それに彼自身、このような企画は嫌いでなかったから。


 鑑賞していたが、勝者を作らせない為に参加したのだ。


「否。傷付けた人々を想えば、その程度で償いは終了させる訳にいかない。逃がしはしない」


 色彩はキリッと倒置を睨み付ける。


 一瞬、ミスターを庇っているようにも思えた。

 しかし色彩のその瞳は、愛しい人を守る温かい瞳とは違う。


 美術代表色彩として、戦う瞳をしていた。


「んか、よくわかんねぇな。マジ大丈夫? 頭やっちゃってんだろ、心配なんだけど」


 予想以上に、ミスターを演じようと努力していた。


 すぐに崩れていくと思われたキャラクター。

 自爆するだろうとすら思われていた存在。


 そう思われていたことに気付いていたからこそ、ミスターは一生懸命頑張った。


 彼は、悔しかったのだ。


 さすがの彼も、そのように思われては悔しい。

 プライドなど持っていなかったが、強くなりたいという想いは抱えていた。


「心配してくれてありがとう。それは愛の形なんだよね? んじゃあさ、遠慮せず僕の胸に飛び付いて来ていいよ」


 実際にそうされたらまた戸惑ってしまうくせに、パイは変わらずそのキャラを演じる。


 だからミスターだって頑張った。


「愛の形。お前の言っていることは、少しだけわかるかも。この俺様にとって、初恋なんだからさ」


 パイの乱し方はかあさんによって証明されているので、それをやろうとした。

 しかし恥ずかしくなってしまい、先にミスターの方が乱してしまう。


「ごめんなさい」


 耐えられなくなり、ミスターは謝ってしまう。


 必死に頑張りはした。

 かなり粘ったので、他の皆も驚きだし本人も満足である。


 恥じらいを残しながらも、清々しい表情で言う。


「ありがとうございました」

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