表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あなたはどのきょーかがすき?  作者: ひなた
パイ おわり
110/189

しゃかい

「今日はニヤニヤしているわね。どうしたの? 気持ち悪い」


 冷たい眼差しで墾田ちゃんはかんなを見ていた。


 彼は確かに嬉しくて、顔が自然とにやけてしまっている。

 しかし演技力も確かなので、微かな違いであった。


 墾田ちゃん以外は、誰一人気付いていなかっただろう。


「なんでもねぇよ」


 演技力に自信を持っていたし、かんなだって気付かれるとは思っていなかった。


「そちらもニヤニヤと。まあ、そっちはいつものことだから今更言わないけど」


 次にシャープの方を見て、墾田ちゃんは言った。


 二人がにやけているのは、完全に同じ理由である。


 そうなのだが、そこまでは墾田ちゃんも気付けない。

 なぜなら彼女は、他人のことを気に掛けてばかりだから。


「幸せ者ね」


 二人を蔑みながらも素直に首を傾げる墾田ちゃん。

 その耳元で、シャープは優しく囁いた。


「髪は大切にしなければいけませんよ、女性なのですから」


 シャープが余計なことをしてしまうので、勇気を出して倒置は言う。


 彼は墾田ちゃんの髪を整えてあげようと、様々な道具を用意していた。

 それでも言い出せなくて、勇気を出そうと努力していたのだ。


 その姿が可愛らしくて、シャープとかんなはにやけてしまっていたということである。


「別に構いやしないわよ。女性だなんて思っていないし」


 倒置の言葉に喜びも感じていたので、それを隠すように素っ気なく墾田ちゃんは返す。


 しかしそれにもめげず、倒置は言った。

 墾田ちゃんにもうそんなこと言って欲しくないと、勇気を出した。


「想い人がいらっしゃるでしょう、あなたにも」


 そう言われてしまい、墾田ちゃんは顔を赤くするしかなかった。

 そう言われてしまい、墾田ちゃんは小さく頷くしかなかった。


「羨ましいわぁぁあ♪」


 嘆きのようにも聞こえる、美しい歌声でシャープは言う。


「羨ましいぜ。んなこと言って貰って」


 その声に掻き消されてはいた者の、小さな声でかんなも呟いていた。


「この場でというのも恥晒しのようですよね? ごめんなさい。しかしこの場以外で会うと言うのは可笑しいですもんね。ごめんなさい。と思った結果、こうなってしまったのです。ごめんなさい」


 謝りながらも、倒置は墾田ちゃんの髪を纏めていく。


 他の人は、ただ見惚れている。

 美しく手際の良い倒置に。その手により美しくなっていく墾田ちゃんに。


「なんか、恥ずかしいわね」


 頬をピンク色に染めて、墾田ちゃんは自分の髪を撫でる。

 まるで自分のものではないようと、喜びの声を上げる。


 乙女らしくなった墾田ちゃんに、パイは見惚れてしまう。

 そうしてくれた倒置に、感謝すら覚えた。


 そして笑顔で言った。


「さすがだね」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ