表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あなたはどのきょーかがすき?  作者: ひなた
パイ おわり
109/189

りか

「凡人などと、見下ろした言い方をするのはよくないと思います。しかし、最終投票が最も大切になるのは事実。そこでどうなるか、ですよね」


 パイと同じことを言うにしても、かあさんはちゃんとフォロー。

 凡人すらも敵に回さないような言い方をする。


 それほどまでに彼女は、勝利に拘る必要があったから。


「皆様は、本当に勝利なさいたいのですか? 軽い気持ちで来ているのならば、私に勝利を譲って欲しいのです。本気で言っていますよ。どうしても、どうしても勝たなければいけないのです」


 頭を下げるだけでなく、かあさんはその場に跪いた。

 敗北と言う恐怖を本格的に感じ始め、なんでもすることを決意したのだ。


「そんな無様な格好を晒してしまってもいいの? 頭の良さそうな理科もその程度なのか、とか思われないかしら。んなことするくらいなら、正々堂々戦って勝利しなさいよ。そちらの方が、あたしらもあんたも気持ち良く終われる筈だしさ。あんたなら、きっと勝てるよ」


 かあさんの姿に憐れみを感じ、墾田ちゃんは優しい言葉を掛けてあげた。

 ただ、墾田ちゃんだって優しいだけのバカではないのだが。


 決まっている。


 自分の好感度アップに繋がるから。

 行動の理由にはそれだって含まれている。


 そしてそれがわかっていても、かあさんには墾田ちゃんの言葉がありがたかった。

 そんな言葉さえ、彼女にとっては希望になれた。


 それほどまでに傷付けられていたのだ。


「笑わせないで下さい。私は自分の実力もわからないほどの最底辺に位置するような奴らと、貴方は仰るのですか? ここで勝利出来るほど優れてはいませんが、そこまで落ちてはいないと思っています」


 キャラを死守しようとしていたかあさん。

 しかし墾田ちゃんの言葉に対し、反射でそう返してしまった。


「いいえ、あんたは自分自身の実力を見誤っている。理科を代表するに相応しい、十分戦えるだけの天才よ。それなのにそんなこと言って、謙遜のつもり? 嫌味にしか聞こえないからやめなさい」


 強い口調で言うけれど、墾田ちゃんだって優しいのだ。

 自分を優先はするけれど、悪戯に”仲間”を傷付けたりはしない。


 勝利という物に強い執念を抱いてはいる。

 それでも、正々堂々勝ち取った勝利以外を求めてはいなかった。


「お前が優秀だってこと、皆もわかっているぜ? 大丈夫だから、楽しく戦おう。勝つことよりも楽しいことの方が大事。文句言う奴がいても、オレが守ってやるって言ったじゃん。信じられないってのかよ」


 目を逸らし頬を掻き、優しく短距離走は言った。

 その言葉はその優しさは、かあさんの心の穴に沁み込んで行く。


 一生抜けはしない。

 それほどまでに深く浸透していた。


 そんなことを狙いもせず言う短距離走を尊敬を含める眼差しで見つめる。


 そして笑顔で言った。


「さすがだね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ